公衆衛生分野で世界に通用する人材育成目指す
聖路加国際大学は11月14日、記者発表会を開催し、専門職大学院公衆衛生学研究科の新設と、看護教育カリキュラムの改定について説明した。公衆衛生学研究科は2017年4月に開設予定で、同大学における新しい大学院の設置は37年ぶり。
公衆衛生学研究科新設の背景には、急速に進む少子高齢化と疾病構造の変化や、国民医療費の増大、グローバル化に伴う新興・再興感染症など現代社会の抱える課題に対し、これまでの臓器別医学から予防を中心とした全人的医療への転換が求められていることがある。同研究科は、同大学の附属施設である聖路加国際病院での豊富な臨床データを活用した医療の質の評価やEBMを学び、公衆衛生分野の諸問題をグローバルスタンダードに照らし合わせて解決する能力を育成する場となる。国内外の教員による世界水準の教育を実践し、社会における人間の健康と幸福の保持・増進に寄与する高度専門職業人の養成を目指すという。
授業は原則英語で行われ、米国公衆衛生教育協議会(CFPH)の基準を満たした世界標準の教育プログラムが用意されている。留学生も積極的に受け入れ予定という。定員は1学年25名で、修業は2年間。実務経験のある医師向けの1年コースや、3年のコースもあり、働きながら学びやすいよう、カリキュラムも工夫したという。
看護学部も定員増、大学院にDNPコース開設
また、看護学部看護学科も、定員を75名から100名に増やすとともに、学士入学もこれまでの2年次編入(定員20名)から3年次編入(定員30名)へ変更することを発表した。さらに、専門看護師教育の指導者不足解消のため、看護学研究科にDNP(Doctor of Nursing Practice)コースを開設し、高度な実践力を備えた教員養成を目指すという。
学士入学制度の変更で、看護学以外の分野で学士号をもっていれば、最短2年で看護師資格を取得できるようになる。専門科目を統合し、理論・演習・実習を連動させることで速習プログラムが可能になった。学士入学者を別クラスに編成することで、学士編入生に特有な困難にも対応した。
同大学学長の福井次矢氏は、「公衆衛生学研究科は、医療職だけでなく、人文社会科学系のバックグラウンドをもつ方々が一堂に会して学ぶ貴重な機会になると考えている。公衆衛生学は日本が世界に後れをとっている分野であり、今後国内の他大学でもこの分野の研究科が設立されると見込まれるが、本学がその先駆けとなる。今回の大学院新設と看護教育カリキュラムの変更は、社会に貢献する人材を輩出するための改革。制度も教育内容も、先進性と国際性を常に意識してこれからも改革を続けていく。現行法では実現不可能だが、将来的には医学以外の大卒者を対象としたメディカルスクールの設置を目指したい」と展望を語った。
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・聖路加国際大学 ニュースリリース