3300万画素の超高精細画像技術を医療機器に応用する初の試み
国立がん研究センターは11月15日、8Kスーパーハイビジョン技術を用いた新しい腹腔鏡手術システムの開発と高精細映像データの活用を検討する研究を開始したと発表した。この研究は、同センターとNHKエンジニアリングシステム、オリンパス株式会社、株式会社NTTデータ経営研究所との共同研究によるもの。
画像はリリースより
8K映像は、従来のハイビジョンの16倍にあたる3300万画素の超高精細画像で、その密度は人間の網膜に迫るといわれている。現在使用されている医療機器は、外国資本が圧倒的なシェアを占めているが、8K技術はNHKで開発されたもの。今回の研究は、日本発の次世代放送技術である8K技術を医療機器に応用する初の試みで、実用化すれば医療現場での大きな変革が期待される国家プロジェクト。
腹腔鏡手術の件数は、近年、急速的に増えている一方で、モニターに画像を映し出して手術を進めるため、画質が手術の質に影響したり、手術操作の制限や死角が発生したりすることで、開腹手術と同等の質が担保できない場合や術中偶発症の発生が問題となることがある。こうした課題を解決するため、光学性能の改善やカメラの更なる高感度化と小型・軽量化、さらに8Kによる広域表示と術者の意向に従ったズームアップの表示も同時に行う技術開発に取り組むという。
がんの治癒率向上や医療経済への貢献などに期待
2017年度中に新腹腔鏡手術システムの試作品完成、動物実験等による試作品の基本性能向上および実証を行い、ヒトを対象とした試験の開始を目標とする。これにより得られた腹腔内の臓器映像やがん腫の微細構造の観察画像と、実際に切除して得られた標本の病理学的解析結果の対比を組み合わせた高精細映像を症例ごとにデータベース化し、新規診断法開発への活用を検討する。また、2018年度には実用化・普及に向けた具体的な計画や、収集したデータを用いた医療上の有用性、病院間でのデータ共有と有効性におけるとりまとめも行う予定としている。
実用化に伴って、がん領域においては適正な病変、リンパ節の切除が可能となることでがん根治性の向上が期待できる。治癒率の向上によって、再発後に分子標的薬を含む高額の薬物療法が必要となる患者を減らし、また合併症の減少により、術後在院日数の短縮へとつながるなど医療経済への貢献も期待できる。さらに、8K内視鏡システムならびに超高精細画像情報データベースを利用することにより、従来は認識することができなかったがん腫の微細構造の観察、新しい画像診断が可能となると期待されると、研究グループは述べている。
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・国立がん研究センター プレスリリース