「九州・沖縄母子保健研究」のデータを活用して
愛媛大学は11月14日、妊娠中の母親の喫煙が生まれた子のアトピー性皮膚炎のリスクを高めることがわかったと発表した。この研究は、同大学が主導する共同研究チームによるもので、成果は学術誌「Nicotine & Tobacco Research」電子版に10月28日付けで公表された。
画像はリリースより
喫煙曝露は、アトピー性皮膚炎に予防的であるという報告もあれば、リスクを高めるという報告、また、関連がないという報告もあり、喫煙曝露とアトピー性皮膚炎との関連について、いまだ一致した結論は得られていない。さらに、妊娠中に喫煙する母親は出生後も喫煙を続けることが多く、出生前後の喫煙曝露が子のアトピー性皮膚炎に与える影響を、出生前と出生後で分けて解析することは困難だった。
今回、共同研究チームは、妊娠中から母親と生まれた子を追跡調査した「九州・沖縄母子保健研究」のデータを活用。母親の妊娠中の喫煙及び出生後1歳までの間の受動喫煙と、2歳時幼児のアトピー性皮膚炎発症との関連について解析した。
1,354人のうち4.6%が医師診断によるアトピー性皮膚炎
九州・沖縄母子保健研究では、妊娠中に実施したベースライン調査に1,757人の妊婦が参加。出生時、4か月時、1歳時、以後1年ごとに追跡調査を実施している。今回、2才時追跡調査で、International Study of Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)の疫学診断基準にのっとり、過去1年間に、アトピー性皮膚炎の症状があったかどうかの情報と、生まれてから2歳までの間に医師からアトピー性皮膚炎の診断を受けたことがあったかどうかの情報を得た。今回の解析では、2歳時追跡調査まで継続的に参加し、解析に使用する変数に欠損のない1,354組の母子を解析対象者とした。ベースライン調査時の居住地、子数、両親の教育歴、家計の年収、両親のアレルギー既往、子の出生体重、性別及び母乳摂取期間を交絡要因として補正したとしている。
その結果、1,354人のうち、229人(16.9%)がISAACによるアトピー性皮膚炎、62人(4.6%)が医師診断によるアトピー性皮膚炎と分類された。出生前後の喫煙曝露を「全くない」、「妊娠中の母親の喫煙のみあり」、「出生後の受動喫煙のみあり」、「妊娠中の母親の喫煙と出生後の受動喫煙の両方あり」の4つのグループに分けて解析したところ、喫煙曝露が全くない場合に比較して、妊娠中の母親の喫煙のみあった場合、医師診断によるアトピー性皮膚炎のリスクを有意に高めていた。一方、出生後の受動喫煙のみあり、妊娠中の母親の喫煙と出生後の受動喫煙の両方あり、では統計学的に有意な関連は認めなかった。また、ISAACによるアトピー性皮膚炎と出生前後の喫煙曝露との間には、統計学的に有意な関連は認めなかったとしている。
今後、さらなる研究成果の蓄積が必要となるが、妊娠中の母親の喫煙が、子のアトピー性皮膚炎の発症リスクを高めている可能性を示す非常に関心の高い研究成果であると、共同研究チームは述べている。
▼関連リンク
・愛媛大学 プレスリリース