漢方薬原料となる生薬をめぐっては、多くを中国など海外からの調達に依存しており、漢方薬の安定供給に向けては、国内で生薬栽培を推進し、生産量を拡大していくことが急務となっている。前身のブロック会議では、漢方薬メーカー(実需者)と生産者が生産を拡大したい品目と需要ニーズをマッチングし、国・地方自治体や研究機関がサポートすることで新たな産地化を支援してきたが、今回から農水省支援事業として実施することになった。
今回からスタートした地域相談会は、同協議会が「薬用作物産地支援体制整備事業」に応募して採択されて開催したもの。10月から北海道を皮切りに、東北、関東と3地域で実施されている。関東の相談会には56人が参加した。ブロック会議では、毎年継続して参加する生産者が目立つ傾向にあったが、今回は初めて参加する生産者が多く、変化が見られた。
この3年間で実需者と生産者の生薬栽培のマッチングが進んでいる。13年度には19件17品目、14年度には11件9品目、15年度には4件4品目と進捗し、試験栽培が進行中、現在も折衝中の案件もある。生産者の栽培希望品目を見ると、15年度はトウキ、カンゾウ、シャクヤク、サイコの順。トウキ、シャクヤク、サイコは国内で生産量が多く、栽培技術が確立し、機械化や登録農薬も進んでいることから人気だ。また、カンゾウは漢方薬のほぼ全量で使われ、需要拡大への期待から希望が多い。
生産者の生薬栽培に対する捉え方も「医薬品原料を栽培するという認識を持ってもらえるようになっている」とし、当初は見られた実需者と生産者がそれぞれ考える品質のギャップが埋まってきているという。一方で、生薬栽培に着手しても「地域のまとめ役がいないと栽培がうまくいかない」という事例も報告され、外部の利害関係者と折衝しながら、生産者を牽引していく人材の確保を課題に挙げた。
農水省生産局の金子勝氏は、説明後に記者団の取材に応じ、「生薬栽培に挑む産地は増えているが、まだ始まったばかり。来年度から事業評価が始まるが、成功するためには継続性が大事」と語った。