ニボルマブ投与で血管肉腫の抗腫瘍効果を示す可能性
京都大学は11月11日、難治性の肉腫である皮膚血管肉腫において、がん細胞ががん免疫のひとつであるPD-L1分子を発現しており、かつ多くの免疫細胞がPD-1分子を発現している患者の予後が比較的よいことを確認したと発表した。この研究は、同大医学研究科の大塚篤司講師、本田由貴大学院生、椛島健同教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Oncoimmunology」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
血管肉腫は高齢者の頭部などに発症する悪性腫瘍のひとつで、手術や抗がん剤、放射線などでの治療が行われているが、5年生存率は10%程度と難治で、予後の非常に悪い疾患。これまで悪性黒色腫や肺がんなどでは「PD-1/PD-L1分子」が腫瘍の進展に関与していることが知られており、この分子の作用をブロックする「抗PD-1抗体」(一般名:ニボルマブ、商品名:オプジーボ) が治療効果を示してきた。
抗PD-1抗体が効果を示すか、医師主導治験を予定
研究グループは、血管肉腫患者の腫瘍細胞がPD-L1分子を発現しているか、免疫細胞がPD-1分子を発現しているかを免疫組織化学染色という手法を用いて調査。106人の患者のうち、30%で腫瘍細胞がPD-L1陽性、18%でPD-1を発現している免疫細胞が多く浸潤していることがわかったという。それらの分子と患者の予後との相関関係を分析したところ、多くの免疫細胞がPD-1を発現し、それに加えて腫瘍細胞がPD-L1を発現している患者は、そうでない患者に比べて予後がいいことが明らかとなった。
また、腫瘍組織から採取し培養した「血管肉腫細胞株」を用いた試験管内の実験から、血管肉腫の腫瘍細胞のPD-L1分子発現が、活性化した免疫細胞の産生するインターフェロンの影響を受けていること、さらに、免疫組織化学染色の結果、PD-1を発現した免疫細胞がPD-L1陽性の腫瘍細胞周囲に集まっていること、そしてPD-L1陽性の腫瘍細胞のまわりにはインターフェロンが分泌されていることもわかったという。
今回の研究成果により、血管肉腫において抗PD-1抗体を投与することによって、腫瘍周囲にあるPD-1を発現した免疫細胞に作用し、抗腫瘍効果を示す可能性が示唆された。研究グループは今後、血管肉腫に対する抗PD-1抗体の効果を確認するための医師主導型治験を予定している。
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・京都大学 研究成果