アジア人に多い滲出型加齢黄斑変性の発症について調査
理化学研究所は11月11日、加齢黄斑変性の中でもアジア人に多く認められる滲出型加齢黄斑変性の発症に関わる遺伝子について、頻度が低く、影響力の大きい遺伝子型を同定したと発表した。この研究は、理研統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長、基盤技術開発研究チームの桃沢幸秀チームリーダー、統計解析研究チームの秋山雅人リサーチアソシエイトらの共同研究グループによるもの。研究成果は、英科学雑誌「Human Molecular Genetics」オンライン版に掲載された。
画像はリリースより
加齢黄斑変性は、欧米では成人の失明原因の第1位。日本でも高齢化と生活様式の欧米化により近年著しく増加し、第4位になっている。特にアジアでは欧米に比べて、異常な血管が脈絡膜から網膜色素上皮の下あるいは網膜と網膜色素上皮の間に侵入して網膜が障害を受ける滲出型加齢黄斑変性の割合が高く、対策が急がれている。しかしながら、その発症メカニズムについては十分に解明されていなかった。
発症メカニズムの解明や、新たな診断・治療法開発に期待
今回、研究グループは11の大学や病院が収集した日本人の滲出型加齢黄斑変性患者群2,886名と対照群9,337名のサンプルを用いて、加齢黄斑変性の関連遺伝子34個のエクソン領域の全塩基配列を調査。基盤技術開発研究チームが開発したターゲットシークエンス法で解析した結果、6番染色体に存在するCFB遺伝子の74番目のアミノ酸がアルギニンからヒスチジンに代わる遺伝子型を持つ場合、加齢黄斑変性の発症リスクが0.43倍と、発症に抑制的であることが明らかになったという。
また、CETP遺伝子に、遺伝子の機能喪失を伴う遺伝子型をひとつでも持つ人では、加齢黄斑変性の発症リスクが2.48倍高くなることがわかった。CETP遺伝子のアミノ酸の機能喪失はHDLコレステロール値を上昇させることが知られており、今後、HDLコレステロールと滲出型加齢黄斑変性の関係を調べる必要があると考えられるという。
これらの結果は、欧米人を対象としたこれまでの研究で報告された結果とは大きく異なる。今後、日本人における加齢黄斑変性の発症メカニズムの解明や、新たな診断法・治療法の開発につながることが期待できると、研究グループは述べている。
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・理化学研究所 プレスリリース