遺伝子診断ネットワーク「LC-SCRUM-Japan」で特定
国立がんセンターは11月8日、RET融合遺伝子陽性の肺がん患者を対象に分子標的治療薬「バンデタニブ(一般名)」を投与したところ、その約半数にがんの縮小効果が認められたと発表した。副作用についても忍容可能であり、比較的安全であると考えられるという。この研究は、同センター東病院の後藤功一呼吸器内科長ら共同研究グループによるもの。研究成果は「The Lancet Respiratory Medicine」に11月5日付けで掲載されている。
画像はリリースより
国がんは2012年、肺がんの新しい遺伝子異常としてRET融合遺伝子を同定。基礎研究で、RET融合遺伝子陽性の肺がんには、RETを阻害する分子標的治療薬が有効である可能性が示され、新たな分子標的治療の開発が注目された。
しかし、RET肺がん患者の割合は非小細胞肺がんのうち1~2%と希少なため、有効性を確認するための臨床試験に必要な数の患者を集めることが難しいという問題点も浮上。そこで、国がんは2013年に全国規模の遺伝子診断ネットワーク「LC-SCRUM-Japan」を立ち上げ、全国の肺がん患者の中からRET肺がんを特定し、さらにRET肺がんの患者を対象としたRET阻害薬、バンデタニブの臨床試験「LURET試験」を医師主導治験として、世界に先駆けて実施した。
国内での保険適用に向けて協議中
この研究では、LC-SCRUM-Japanにおいて、2013年2月~2015年3月に1,536名の進行非小細胞肺がん患者に対して遺伝子検査を行い、34名のRET肺がんを特定。このうち参加規準を満たした19人のRET肺がんの患者がバンデタニブの投与を受けた。その結果、患者の約半数に、がんの明らかな縮小が認められたという。
今回の結果で、進行RET肺がんの患者に対するバンデタニブの有効性が世界で初めて示されたことで、新たな治療選択肢として期待される。現在、国がんでは進行RET肺がんの治療薬として、バンデタニブが国内で保険適用されるよう、製薬企業と申請に向けた協議を行っている。研究グループは、今後もLC-SCRUM-Japanを通じて、希少頻度の肺がんの遺伝子スクリーニングを行い、臨床試験へ結びつけ、患者へ早期に治療薬を提供できることを目指す、と述べている。
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・国立がんセンター プレスリリース