第49回日本薬剤師会学術大会で田中秀和氏らが発表
医師の指示に基づき錠剤に刻まれた割線で2分割(半割)して薬剤師が調剤するケースは日常的に保険薬局などで行われている。これは一部条件が伴うものの、調剤報酬の自家製剤加算を取得することができる。割線については通常、添付文書に有無が明示されているが、外観上は割線のように見える「割線模様」を有する錠剤があり、調剤現場で混乱をきたす可能性があることがわかった。先頃開催された第49回日本薬剤師会学術大会で、あじさい薬局(神奈川県横浜市)の藤澤哲也氏、あい調剤薬局(長崎県五島市)の田中秀和氏、明治薬科大学大学院薬学研究科の三上明子氏、杏林大学医学部付属病院薬剤部の若林進氏が発表した。
同グループは独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医療医薬品添付文書DB、医薬品卸・アルフレッサが提供する医療用医薬品添付文書DB「SAFE-DI」で錠剤を対象に割線の有無を検索(2016年9月3~4日時点)。PMDAでは添付文書件数として「割線あり」が1835件、「割線なし」が2751件、SAFE-DIでは調剤包装単位当たりで「割線あり」が3438件、「割線なし」が5354件という結果になった。
両者の件数定義が異なるため、一番大きな情報ギャップが起こり得ると思われるPMDA検索での「割線なし」とSAFE-DIの「割線あり」と検索された品目について手作業で照合を行った。その結果、PMDAの添付文書で「割線なし」としながら、SAFE-DIでは「割線あり」とされている錠剤は153件存在した。これらを製造販売元別に分類すると、トップは後発品を主に製造販売するA社が27件、次いで先発品を主として製造販売するB社、後発品を主に製造販売するC社が各10件などとなった。
また、SAFE-DIで「割線なし」と分類されていた5354件の中にも画像で判別すると割線と判断できるものを有する錠剤は54件。田中氏は「医療従事者向けの医薬品情報専門サイトですら、割線模様を割線として認識している可能性が示唆された」と説明した。
34.8%の薬剤師「割線模様の存在すら認識しておらず」
また、病院・診療所および保険薬局の薬剤師へのアンケート(回答者155人)から、外観のみで割線判断を行った経験を有する薬剤師は、病院・診療所勤務、保険薬局勤務にかかわらず7割以上存在し、勤務年数にかかわらず7割以上の薬剤師が添付文書を参照せずに外観のみで割線の有無を判断した経験を有していることがわかった。さらに、全体の34.8%は割線模様の存在すら認識していないこともわかった。
その一方で割線模様を知らなかった薬剤師の割合は、病院・診療所勤務、保険薬局勤務ともに勤務年数が長くなるほど低くなる傾向があった。割線模様の錠剤を分割した場合、自家製剤加算は取得できず、「勤務年数が長いほど、レセプト審査での返戻の経験やその口伝などで割線模様の存在を認識しているためではないか」(田中氏)との見方を示した。
そのうえで田中氏は「添付文書上に割線ありとの記載がないにもかかわらず、一見して割線と見える割線模様を有する錠剤については、必ず割線として承認を得て添付文書へ明記などの制度の見直しが必要」と提言している。
田中氏は「割線として認められていない割線模様での分割は、患者に成分量が統一されていない錠剤を不規則に調剤することと同じ。割線の有無を添付文書などの資料で確認することは薬剤師として必須の作業」と指摘。さらに薬剤師でも割線模様の存在を知らない人たちが存在するため、「介護職員などの他職種が患者の服薬介助に関与する場合は、割線と思われる線が存在することで、構造上半割や粉砕が不可とされている薬剤を半割してしまうリスクがさらに高まる」と警告した。
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