ミクログリアの機能変化と恐怖記憶の形成・持続過程との関係に着目
東北大学は11月1日、脳内炎症の抑制が恐怖記憶に伴う行動異常を改善するという研究結果を発表した。この研究は、同大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)の富田博秋教授と、災害科学国際研究所の兪志前助教らが、東京農業大学の喜田聡教授らとの共同で行ったもの。この研究成果は、学術雑誌「Brain Behavior and Immunity」の電子版に掲載された。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、災害や事故・暴力などによる心的外傷体験に伴う恐怖記憶が不快な感情や身体反応を伴って蘇ることなどが長期に渡って持続し、日常生活に支障をきたす状態。これまでにPTSD罹患者の血液やストレスを与えられたモデル動物(マウス)の脳では、炎症を引き起こすサイトカインという種類の一群のタンパク質の量の異常が指摘されていた。
今回の研究は、脳の中でこのような炎症性サイトカインを産生する「ミクログリア」という細胞の機能変化と、恐怖記憶の形成・持続過程との関係に着目して行われたとしている。
TNFα産生を抑制する薬剤の臨床応用で心的外傷後ストレス反応改善の可能性
研究グループは、PTSDのモデルマウスで認められる恐怖体験の記憶が持続することに伴う行動異常に伴って、脳内ミクログリア細胞において炎症に関わるサイトカインというタンパク質のひとつであるTNFαの産生が増加し、行動異常の改善とともに産生が減少することを発見。さらに、ミノサイクリンの投与によるTNFα抑制が恐怖記憶による行動異常の改善を促進することが確認されたとしている。
この研究結果は、TNFα産生を抑制する薬剤の臨床応用により、心的外傷体験に伴う恐怖記憶の持続に起因する心的外傷後ストレス反応を改善する可能性を示唆すると、研究グループは述べている。
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・東北大学 プレスリリース