■アステラス、4年ぶりの中間期減収
国内製薬大手4社の2017年3月期中間決算が出揃った。海外で売上が拡大したが、円高によるマイナス影響を受け、揃って減収となった。中でも、アステラス製薬は中間期では4年ぶりの減収で、日本市場では、主力の抗癌剤「エンザルタミド」の市場拡大再算定による25%の薬価引き下げや、ワクチンで提携する化学及血清療法研究所の出荷自粛などもあり、国内外で振るわなかった。一方、利益面では為替影響がプラスに向き、減収減益となった第一三共を除き、大幅増益を達成した。
武田は、前年同期比で約6%の減収も現地通貨での実質ベースでは7.4%増。潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」が欧米で拡大して約8割増と牽引し、昨年12月に発売した多発性骨髄腫治療薬「ニンラーロ」が売上128億円を計上するなど新製品が好調だった。
昨年度上期で441億円を売り上げた長期収載品事業を武田テバ薬品に譲渡した国内は、7%の減収となるも、それを除いた売上では4%増となった。高血圧症治療薬「アジルバ」、高脂血症治療剤「ロドリガ」が二桁伸長、酸関連疾患治療剤「タケキャブ」も長期処方解禁による拡大で前年同期から7倍に急伸した。
海外売上では、円高によるマイナス影響が633億円に上り、米国が1%増と辛うじて増収を確保するものの、欧州・カナダは9.2%減、新興国は15.8%減と落ち込んだ。為替影響を除くと4%成長だった。
ここ数年業績が好調だったアステラスは、円高に加え、グローバル製品の抗癌剤「エンザルタミド」が伸び悩み、5.2%減となった。為替影響を除くと4%増。エンザルタミドは、米国と薬価改定で25%の引き下げを受けた日本で売上を落とし、欧州やアジアなどで拡大したが、3%増にとどまる。去勢抵抗性前立腺癌市場が当初予測に比べて拡大せず、通期売上予想を300億円程度引き下げた。
日本市場は、過活動膀胱治療剤「ベシケア」「ミラベグロン」などが拡大するものの、7.6%減。米州は11.3%減と二桁の落ち込みとなった。
エーザイは、売上で2%減となったが、現地通貨ベースでは世界全地域で増収を達成。円高で200億円、薬価改定で100億円の影響を受けながらも、抗癌剤「レンビマ」が2.3倍と大幅に伸長した。国内ではアルツハイマー病(AD)治療剤「アリセプト」が約2割減と長期収載品が落ち込んだが、厳しい市場環境で4.5%増と踏ん張った。
唯一の減収減益となったのが第一三共。主力の降圧剤「オルメサルタン」の特許満了による後発品が10月に登場。上半期はそれを見据えて在庫調整を行い2割の売上減と沈んだ。グローバル製品の経口抗凝固薬「エドキサバン」の拡大でも減収をカバーしきれない。
一方、国内では、プロトンポンプ阻害剤「ネキシウム」やAD治療剤「メマリー」が堅調だったほか、2型糖尿病治療剤「テネリア」やエドキサバンが倍増と約5%の増収と薬価改定を跳ね返した。医療用売上高ではトップの武田とわずか数億円の差に肉薄した。
利益面では、円高が販管費や研究開発費の減少につながり、増益要因となった。武田は長期収載品事業の譲渡益で営業利益5割増、純利益は倍増を達成。エーザイも消化器疾患子会社「EAファーマ」株の割安購入益が寄与し、各利益が倍増した。アステラスも二桁増益。第一三共は前年同期に山形工場譲渡益を計上した反動で二桁減益だった。
通期は、武田とアステラスは減収増益、エーザイは売上横ばい、営業二桁増益・最終減益、第一三共は減収減益を予想する。
表:国内製薬大手4社の2017年3月期中間決算(単位:百万円、▲はマイナス)