歯科検診受診者3,390人を5年間追跡調査、発症リスクを職種ごとに分類
岡山大学は10月28日、歯科検診の受診者3,390人を対象に5年間の追跡研究を行い、男性における歯周病の発症リスクが職種で異なることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学病院予防歯科の入江浩一郎講師、愛知学院大学、三重大学の共同研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Epidemiology」オンライン版に10月26日付けで掲載されている。
近年、職業や経済力などの社会経済的要因の違いで、健康に格差のあることが指摘されている。その格差は年々拡大しており、喫緊の課題となっている。研究グループは、愛知県名古屋市内における歯科検診の受診者3,390人(男性2,848人:平均年齢41.0±9.77歳、女性542人:平均年齢41.6±10.46歳で)を対象に、2001年度から2006年度までの5年間、追跡研究を実施。職業の分類については、厚生労働省による職業分類(1987年)に基づいて分類した。
専門的・技術的従事者と比べて運輸・通信従事者2.74倍、販売従事者2.39倍
その結果、男性では、専門的・技術的従事者と比較して、生産工程・労務従事者は2.52倍、販売従事者は2.39倍、運輸・通信従事者は2.74倍歯周病発症のリスクが高いことが明らかとなった。これらの職種は、長時間労働や、十分な睡眠や休息が取れない傾向にあり、職業に由来する精神的なストレスが高いことが報告されている。また、職業による精神的なストレスは、歯科保健行動に悪影響を及ぼすことが知られており、職業間における歯科保健行動の違いが、職業間で歯周病発症に差が生じた原因になったと推測されるとしている。
一方、女性においては、歯周病の発症と職業との間に有意な関連はなく、女性は男性に比べ、健康に対して気を遣う傾向にあり、社会経済学要因を受けにくいのかもしれないと、研究グループは推測している。
この研究成果により、職域における歯科検診は任意だが、今後の成人期における歯科保健では、職業によっては、定期的な歯科検診と歯科保健指導の実施が強く推奨される必要があると、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・岡山大学 プレスリリース