CDK4/6を阻害する新規の経口分子標的薬
ファイザー株式会社は10月31日、「手術不能又は再発乳癌」の効能・効果で、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬パルボシクリブ(一般名)の国内における製造販売承認を申請したと発表した。
乳がんは、初診断時に転移がある場合、5年生存率は26.3%と予後が大変厳しい状況。転移がない場合でも、原発巣に対する根治的治療後、推定20~30%に転移・再発がみられ、切除可能な局所再発を除いて治癒は極めて困難だ。転移・再発乳がんの化学療法後の10年生存率はわずか5%である。
今回申請を行ったパルボシクリブは、CDK4/6を阻害する新規の経口分子標的薬。CDK4/6は、細胞周期の調節に主要な役割を果たしており、細胞増殖を引き起こす。パルボシクリブはCDK4および6を選択的に阻害して、細胞周期の進行を停止させることにより、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。日本も参加した2つの国際共同第3相試験、および海外/国内第2相試験の結果、パルボシクリブは進行乳がんに対して内分泌療法との併用で臨床的に意義のある有効性が認められ、これらの結果を取りまとめ、今回の申請に至ったという。
米国では「IBRANCE」の製品名で、4万人以上の患者に使用
パルボシクリブは、世界初の経口CDK4/6阻害薬であり、米国をはじめ世界20か国以上で承認されている。同剤は、米国食品医薬品局(FDA)により、2013年4月にブレークスルー・セラピー(画期的治療薬)の指定を受け、2015年2月に迅速承認された。米国では「IBRANCE(R)」の製品名で、これまでに4万人以上の患者に使用されている。
現在の米国における適応症は、「HR+HER2-閉経後進行または転移乳がんに対する初回内分泌療法(レトロゾールとの併用)」「内分泌療法により疾患が進行したHR+HER2-進行または転移乳がん(閉経の有無を問わない)に対する治療(フルベストラントとの併用)」。レトロゾール、フルベストラントいずれの併用についても、全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)や米国臨床腫瘍学会(ASCO)など種々のガイドラインにおいて推奨されている。
欧州医薬品庁(EMA)には、2015年8月に承認申請、2016年9月にEMAの医薬品委員会(CHMP)により、「HR+HER2-局所進行または転移乳がん(アロマターゼ阻害薬との併用または内分泌療法を受けた患者ではフルベストラントとの併用)」を適応症として承認勧告を受けている。
日本でのパルボシクリブの承認申請は、新たな治療選択肢を必要とする進行乳がんと闘う日本の患者にとって非常に重要なステップになると同社は述べている。
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・ファイザー株式会社 プレスリリース