調査結果を公表、検証実験の内容も詳細に公開
東京医科大学病院は10月28日、2016年4月15日に病院内で生じた術中火災について、外部調査委員会による報告書を同病院ホームページに掲載した。
画像はリリースより
火災は4月15日、同院の産科・婦人科に入院中の患者に対する子宮頸部円錐切除術において発生した。パルスホルミウム・ヤグレーザーを使用し、子宮頸部の切除範囲をマーキング中、ドレープの患者右足下部部分から出火しているのを医師が確認。医師、看護師が生理食塩水を用いて消火作業を行い鎮火したが、患者の臀部から両側の大腿後面にかけて広範囲な熱傷を来したというもの。同日、病院内で行われた検討会では、「手術室、手術台の清掃にアルコールなどの可燃性物質は使用していない」「手術部位の消毒にアルコールを含有した消毒液は使用していない」「手術台に敷いてある温熱マットや手術台には異常はない」「レーザー手術器によるレーザー照射は患部術野以外では照射されていない」ことが確認されたうえで、どのような機序で出火したか説明困難と判断された。
そこで同院では、外部調査委員会を設置。複数回の検証実験を行うなどして、出火原因を検討。10月11日に委員長から病院長に報告書を提出されていた。
レーザー手術器の製造元「同様の事例は国内外ともに認められず、極めてまれ」
検証実験の結果、出火原因として考えられる最も高い可能性は、「可燃性の腸内ガス(おなら;メタンガス、水素など可燃性ガスが含まれる)が術野である膣内に導入された状態で、ある限られた条件下のもとレーザー照射されることにより着火し、膣内から臀部(肛門付近)まで広範に燃焼が起き、最終的に小ドレープ(患者の臀部の下に敷いていた覆布)への着火に結び付いた」ものと判断された。
日本産科婦人科学会統計によると、子宮頸部円錐切除術適応者は2013年が13,885名、2014年が13,757名と、約14,000名前後で推移している。腸内ガスへのレーザー照射による着火について、今回のレーザー手術器の製造元のルミナス本社(イスラエル)の調べでも、このような事例の報告は国内外ともに認められないことから、極めてまれな事例といえる。報告書では、同様な事案が生じないよう、病院内で万全な安全対策を講じるとともに、監督官庁への報告、日本医療機能評価機構への報告を行い、他の医療機関に周知することを求めている。
同病院はホームページで「本事案の発生を受け、現在までに、レーザー手術に関する教育・研修やレーザー手術器の保守管理の徹底、手術室スタッフによる消火訓練の実施など、安全管理面の対策を図ってまいりました。今後、本報告の検証内容および委員会からの指摘事項に関しても、早急に対応して再発防止に取り組むと共に、信頼回復に向けて全力を尽くしてまいります」とコメントしている。
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