有効なワクチンがないHCV、早期の実用化目指す
国立感染症研究所は10月27日、培養細胞で作製された不活化C型肝炎ウイルス(HCV)粒子が、強力な新規アジュバントであるK3-SPGとともに接種することで、有効かつ安全なHCVワクチンとして使用できる可能性を示す研究結果を発表した。この研究は、京都大学霊長類研究所の明里宏文教授、国立感染症研究所の加藤孝宣室長らの共同研究によるもの。
画像はリリースより
HCVは慢性肝炎を引き起こし、肝硬変や肝がんの原因となる。HCVワクチンの開発はこれまで世界中で試みられてきたが、未だ実用化されていない。HCVのエンベロープタンパク質を抗原として用いたワクチンは、マウス、モルモット、チンパンジー等のモデルにおいて中和抗体を誘導できることが報告されており、既に第1相臨床試験が行われている。またHCV抗原を発現させるウイルスベクターを用いたワクチンでは、細胞性免疫の誘導も報告されている。しかし、感染・発症予防に必要とされる中和抗体および細胞性免疫の両方を同時に誘導できるワクチンは開発されていなかった。
感染阻止に有効な中和抗体と細胞性免疫の両方を効率良く誘導
研究グループでは、2005年に報告された培養細胞によるHCV増殖システムの技術を応用してHCV粒子を大量に培養し、不活化したHCVワクチンの有効性について検討。その結果、不活化HCV粒子を新規アジュバントであるK3-SPGとともに小型霊長類モデルのコモンマーモセットに接種したところ、感染阻止に有効な中和抗体と細胞性免疫の両方を効率よく誘導できることを初めて明らかにした。
研究グループは、今後、不活化HCV粒子の大量合成技術やワクチン接種プロトコルの最適化を通じて、早期のHCVワクチン実用化を目指したいとしている。
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