開発中の新規がん治療薬を取り込み、がん領域を強化
アステラス製薬株式会社は10月28日、がんに対する抗体医薬を開発するドイツのマインツに拠点を置くバイオ医薬品企業Ganymed Pharmaceuticals AG(以下、Ganymed社)の株主との間で、アステラス製薬がGanymed社を買収することに合意、契約を締結したと発表した。
Ganymed社は、2001年に設立された非上場のバイオ医薬品企業。Ideal Monoclonal Antibodies(IMABs)と呼ばれる新規のがんに対する免疫療法の研究開発に注力している。IMABsは、がん細胞に発現するタンパクに対して高い選択性を有する一方で、正常な細胞には結合しないことが特徴。この特異性で、正常な細胞を傷つけることなくIMABsが結合したがん細胞のみを選択的に効率よく攻撃することができるため、副作用を軽減した上で広い治療濃度域の最適用量を設定できると期待されている。同社は、この療法を活用したIMAB362を含み、がん領域に非臨床段階、臨床段階にある複数の開発品を有しているという。
数週間以内に買収完了、Ganymed社を完全子会社化する予定
中でも開発の進んでいるIMAB362は、細胞間接着のひとつであるタイトジャンクションを形成する膜貫通型タンパク質Claudin18.2を標的とする抗体医薬品候補。Claudin18.2は、正常細胞では胃細胞に局所的に発現している一方、胃腸腺がんの80%、すい臓がん、胆管がん、卵巣がんおよび肺がんの60%と複数のがんで高発現しているといわれている。IMAB362の作用機序は、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)活性、補体依存性細胞傷害活性(CDC)、および化学療法薬との併用で腫瘍微小環境に対する免疫調節と考えられている。また、同剤は、米国および欧州において、胃がんおよびすい臓がんに対しオーファンドラッグの指定を受けているという。
今回の買収契約に基づき、アステラス製薬はGanymed社の全株式を取得するための契約一時金として4億2,200万ユーロを支払う。さらに、同社の株主に対し、IMAB362の開発の進捗に応じて、最大で総額8億6,000万ユーロを支払う可能性がある。今後アステラス製薬は、必要な法的諸手続きを経て数週間以内に買収を完了し、Ganymed社を完全子会社化する予定だという。
なお、同買収によるアステラス製薬の通期(2017年3月期)連結業績への影響は現在精査中だとしている。
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・アステラス製薬株式会社 ニュースリリース