シデロフォア構造を分子内に有するセファロスポリン系抗菌薬
塩野義製薬株式会社は10月27日、同社が創製し、開発を進めている新規注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬「cefiderocol」(一般名)の良好な非臨床試験結果を、米国で開催された米国感染症学会週間「Infectious Disease Week 2016」において公表したと発表した。
既存の抗菌薬が効かない薬剤耐性菌は、2016年5月のG7伊勢志摩サミットにおいて対策の強化が協議されるなど、世界的に極めて重大な社会問題となっている。世界保健機構(WHO)の報告によると、薬剤耐性菌は年々増加しており、特にカルバペネム系抗菌薬に耐性を示す緑膿菌やアシネトバクター、腸内細菌科最近等のグラム陰性菌を原因菌とする感染症は重病化・難治化するリスクが高く、有効な治療薬の開発が強く望まれている。今回の結果により、cefiderocolがこれらの耐性菌に対する有効な治療薬となる可能性が強く示された。
シデロフォアは細菌が産生する鉄と結合する物質で、細菌の成長や増殖に不可欠な鉄を菌体内に取り込む機構で重要な役割を担っている。cefiderocolは、そのシデロフォア構造を分子内に有するセファロスポリン系抗菌薬で、鉄と結合したcefiderocolは細菌の鉄取り込み機構を利用して効率的に菌体内に侵入し、抗菌効果を発揮するとされている。
8,765株の99.6%に対し、4μg/mL以下の濃度で細菌の増殖を抑制
今回発表された非臨床試験では、北米および欧州の患者から分離された8,765株のグラム陰性菌(緑膿菌、アシネトバクターおよび腸内細菌科細菌)の99.6%に対して、cefiderocolは4μg/mL以下の濃度で細菌の増殖を抑制する強力な抗菌活性を示した。
8,765株のグラム陰性菌のうち、カルバペネム系抗菌薬メロペネム非感性のグラム陰性菌が1,290株含まれていたが、cefiderocolのMIC90は、それぞれの菌種(緑膿菌、アシネトバクターおよび腸内細菌科細菌)に対して1μg/mL、1μg/mL、4μg/mLを示した。一方、その1,290株に対して、2014年12月ならびに2015年2月にFDAにより承認されたceftolozane/tazobactam、ceftazidime/avibactamは、32μg/mL以上のMIC90を示したとしている。
なお、同剤は現在、複雑性尿路感染症に対する非劣性検証試験、およびカルバペネム耐性グラム陰性菌感染症に対する第3相臨床試験を実施中である。
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・塩野義製薬株式会社 プレスリリース