AED設置の増加に伴い、市民による電気ショック実施も増加
京都大学は10月27日、市民の自動体外式除細動器(AED)使用で心停止からの救命者数が増加したことを、同大学環境安全保健機構の石見拓教授、大阪大学の北村哲久助教らのグループが実証したと発表した。同研究成果は、米学術誌「New England Journal of Medicine」に同日付けで掲載されている。
画像はリリースより
AEDを用いた早期の電気ショックは、病院外での心室細動患者を救命するのに重要な手段で、公共の場所に設置されたAEDを使用することで、心室細動患者への電気ショックまでの時間を短くすることが可能だ。日本では2004年7月から市民によるAEDの使用が法的に許可され、2013年には42万台以上が公共の場所に設置されている。しかし、院外心室細動患者に対する公共の場におけるAED普及効果について、国家規模での評価は十分に行われていなかった。
市民によるAED使用と心停止患者の救命率向上が継続
研究グループは、消防庁が全国の救急搬送された心肺停止患者を対象として実施している調査データから、2005年から2013年までに蘇生を試みられた、市民が発症を目撃した院外心原性心室細動患者を登録。心停止1か月後に脳機能がどの程度回復しているかという点を指標にし、市民からAEDで処置を受け順調に回復している生存者数を調査したという。
同データによると、調査期間に市民が目撃した院外心原性心室細動患者数は43,762人。そのうち4,499人(10.3%)が市民による電気ショックを受けていた。市民による電気ショックを受けた人の割合は、2005年の1.1%から2013年の16.5%まで増加しており、順調に回復した1か月生存者の割合は、市民による電気ショックがある場合は38.5%と、ない場合の18.2%に比べ有意に高い結果になった。市民による電気ショックが大きく貢献し、順調に回復したと考えられる 1か月生存者の見積もり数は、2005年の6人から2013年の201 人まで増加しているという。
以上の結果から、日本において、市民によるAEDを用いた電気ショックの実施が増加したことは、病院外心室細動から順調に回復した生存者の増加に貢献したと考えられる。一方で、AEDの普及台数に対して救命された人数は不十分とも言え、さらにAEDの利活用を促すための教育と、実践のための社会運動を進めていく予定だという。また、普及の成果は実証されたが、更なる普及には費用対効果の検討が求められる。研究グループは今後、スマートフォンなどのSNSを活用して、AEDと救助者を効率よく心停止現場に派遣する取り組みなど、AEDの活用率を高める仕組みの構築と評価も進めていくとしている。
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・京都大学 研究成果