■今月から日本で試行開始
国際製薬医学会は、医薬品開発の職場における実務遂行能力をグローバル基準で認定する新たな「医薬品開発スペシャリスト」(SMD)プログラムを、今月から日本で試行的にスタートさせた。国内の製薬企業と医療機関から、薬学等の教育を受けた開発業務に携わるリーダー候補生とメンター(指導者)を務める職場上司10組が参加。実際の開発プロジェクトを動かしながら、困難な局面でもリーダーシップを発揮して適切に対応できるかどうか実務の遂行能力を上司と第三者が評価し、医薬品開発の“スペシャリスト”を育成していく。来年9月まで試行を実施し、制度設計の確認などを行う。
同プログラムは、製薬医学教育の認証を行う欧州のNPO「ファーマトレイン」が定める国際カリキュラムの基準に達した人を第三者的に認定するもの。多くの製薬企業では、体系的な教育カリキュラムや評価基準が確立されておらず、開発実務の実行力を持つ人材を計画的に育成していくのが難しいのが現状だ。
そこで今回、同プログラムを試行的に導入することにより、客観的に開発実務の遂行能力を評価し、医薬品開発のスペシャリストとして、困難な状況でもリーダーシップを発揮し、開発業務全体をマネジメントできる人材の育成を進めたい考え。
参加対象は、製薬企業の開発部門、メディカルアフェアーズ部門、医療機関の臨床研究管理センター等の職員。実際にプロジェクトを動かしながら、上司が業務の遂行能力を評価し、さらに第三者の国内評価委員会が評価を加え、認定する。
開発業務の遂行能力を見る指標として、▽創薬と早期開発▽臨床開発と臨床試験▽薬事規制▽医薬品安全性サーベイランス▽倫理と被験者保護▽ヘルスケア市場▽コミュニケーションとマネジメント――の七つのドメインを設定。そのうちリーダーシップ能力を見る「コミュニケーションとマネジメント」は全員必修とし、さらに参加者の業務に合わせて二つ以上選ぶことになっている。
プログラムのカギを握るメンターの職場上司は、各ドメインについて、57項目の実務遂行能力リストに沿って応用知識、スキル、態度・行動の面から部下である参加者の育成状況を具体的に評価する。
国際的に定められたカリキュラムの基準を達成するまで、定期的に進捗を確認しながら育成を進め、第三者の国内評価委員会の評価を受け、妥当と判断された場合、最終的に医薬品開発スペシャリストとして国際認定される。
今回のプログラムでは、入社後約2~4年の一定の開発業務を経験した若手社員が到達するレベルを目標に設定。職場教育として、開発業務全体にリーダーシップを発揮できる人材育成を狙いとしている。例えば、「臨床開発と臨床試験」のドメインでは、モニタリングだけでなく、開発方針のプランニング、試験の計画と実施、施設選定、試験結果の解釈など、将来のプロジェクトリーダーへの成長を見据えたカリキュラムとなっている。
今月からは日本で試行的にパイロット事業がスタートした。初年度は、それぞれ参加している製薬企業、医療機関の職場の育成計画に沿って参加者の実務遂行能力を評価しつつ、国際基準のカリキュラムを日本に導入した場合の制度設計などを確認していく。