男女60人を週2回、週4回、週7回の3群に分けて12週間施行
熊本大学は10月26日、熊本発の2型糖尿病治療機器(温熱微弱電流併用療法)の実用化に向けた臨床試験の結果を公表した。この治療機器は、同大学大学院生命科学研究部代謝内科学分野の近藤龍也講師、荒木栄一教授らが、同大学薬学部遺伝子機能応用学分野の甲斐広文教授らと共に開発してきたもの。この研究は英国科学誌「Nature」の姉妹誌、「Scientific Reports」オンライン版に発表された。
画像はリリースより
同治療機器は、微弱電流(Mild Electrical Stimulation、MES)と温熱(Heat Shock、HS)を同時に伝達する特殊ゴムを介して腹部に直接刺激を与え、内臓脂肪減少および血糖改善効果をもたらすもの。
2014年に「eBioMedicine」誌に臨床試験(1回60分を週4回施行)で、肥満2型糖尿病男性のHbA1c値を0.43%低下させることを報告したが、今回は男女を問わず60人の肥満2型糖尿病患者に対して、週2回、週4回、週7回の3群(1回あたり60分施行は以前と同様)に分け、12週間施行することにより、治療をどれくらいの頻度で行うと最も効果があるのか、その治療効果を判定した。
患者の負担少なく、運動療法が困難な状況での適切な治療に期待
その結果、施行頻度が高いほど内臓脂肪減少効果およびHbA1c値の低下効果を認めた。また、慢性炎症、脂肪肝マーカー(脂肪肝の診断指標値)、腎機能および脂質プロファイル(脂質に関連する指標値)の改善を認めた。さらに、この治療を、現在糖尿病治療に最も多く用いられているDPP-4阻害薬と平行して加えた場合、より強い血糖改善効果を示したとしている。
これらから、MES+HSによる熱ショック応答経路(heat shock response、HSR)活性化は糖尿病治療の新たな選択肢となり得ることが示された。また、この治療機器はベルト型の機器を身体に装着するだけと患者に負担が少なく、運動療法に類似した効果を期待できるため、過体重や高齢、四肢の障がいなどにより運動療法が困難な状況においても適切な治療が可能となることが期待されると、研究グループは述べている。
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・熊本大学 プレスリリース