■財政効果に懐疑的見方も
社会保障審議会医療保険部会は26日、要指導医薬品や一般用医薬品にスイッチされた医療用医薬品の保険給付率を現行の7割から引き下げ、患者の自己負担を増やすかどうかについて議論した。委員からは「医療保険の給付率を下げるのではなく、OTC化された段階で保険外とすべき」と保険外しの要求があった一方、「スイッチされたから自己負担を増やすのは乱暴」「7割給付を維持する医療保険の大原則をなし崩しにする」などと反対意見も強かった。政策的な観点から「給付率を下げれば企業が開発しなくなり、財政効果は短期的」と懐疑的な見方も出た。
厚生労働省は、これまでも医療費適正化の観点から、診療報酬改定において単なる栄養補給目的でのビタミン剤の投与などを保険給付外とする対応をしてきたが、昨年、政府の経済・財政再生計画の改革工程表にスイッチOTC化された医療用薬の保険給付率の検討が盛り込まれ、2016年度末までに結論を得ることが求められていた。
この日の会合では、スイッチ化された医療用薬の保険給付率を現行の7割から引き下げることの是非について議論した。
森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「スイッチ化された薬は、既に安全性が確立し、一般的に価格が低い。仮に保険外となれば、保険で使える高薬価品へのシフトが考えられ、安くて安全性が確立された薬が保険の中で使いにくくなるのではないか。国のスイッチ化の方針にもブレーキがかかる」と疑問を呈し、「結果として国民のためにならない」と反対姿勢を示した。
松原謙二委員(日本医師会副会長)も「OTCの副作用の重さが理解されてない」として、「何でもOTCというわけにはいかず、スイッチOTCが販売されている薬だから自己負担増とするのは乱暴」と断じた。
新谷信幸委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は「日本の医療保険システムを支える大原則に、特定の薬の分野で穴を開けていくことが先例となることを危惧している」と懸念を表明。「7割給付を維持する観点から自己負担増は慎重に検討すべき」と述べた。
これに対して、白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は「原則はOTC化されたら保険から外すのが本来あるべき姿」と主張。望月篤委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)も「市販類似薬を保険給付対象とするのは妥当なのか」と問題意識を示し、「給付率を下げるより、保険外とした方が制度の安定性は保たれるのではないか」とした。
ただ、菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)は、「基本的にはOTCがあるかないかで保険負担について議論すべきでない」とした上で、「財政効果が目的ならば、給付率を引き下げた段階で既存薬についての財政効果はあると思うが、それ以降は企業が開発しなくなり、長期的な効果は見込めないのではないか」と政策としての有効性に懐疑的な見方を示した。