腎臓での酸化ストレスが腎臓病を悪化、慢性腎臓病の発症・進行に
東北大学は10月21日、腎臓が障害をうけると発生する「酸化ストレス」が腎臓病を悪化させ、慢性腎臓病(CKD)の発症・進行につながることを明らかにする研究結果を発表した。この研究は、同大学東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門の祢津昌広助教、同大学院医学系研究科医化学分野で、現・米国ノースウエスタン大学の相馬友和研究員、同大学大学院医学系研究科酸素医学分野の鈴木教郎准教授、同医化学分野・東北メディカル・メガバンク機構長山本雅之教授らのグループによるもの。同研究結果は、国際腎臓学会誌「Kidney International」のオンライン版で公開されている。
画像はリリースより
CKDは体内に老廃物や毒素が溜まることで心臓病や脳卒中につながる難病で、日本では成人の8人に1人の割合で発症する。進行すると血液透析などの「腎代替療法」が必要となり、医療費高騰の一因となっている。
これまで、敗血症、大出血、心臓病などの重い病気や、血管の手術により腎臓へ流入する血流が不安定になると、急激に大量の酸化ストレスが生み出され急性腎障害となること、高血圧や糖尿病といった生活習慣病が存在すると腎障害が徐々に進行し、最終的にはCKDに至る例が少なくないことがわかっていた。また、急性腎障害の治療では、酸化ストレスを消滅させることは難しいと考えられていた。
急性腎障害の早期に酸化ストレスへの抵抗性を高め、進行を抑制
マウスに手術を施し急性腎障害を起こすと、2週間でCKDのような病態を生じることから、研究グループは、酸化ストレスを消去する能力の高い遺伝子改変マウスを作出。この遺伝子改変マウスでは、手術後のCKDの病態が軽度であることを発見したという。次に、急性腎障害を生じたマウスに、発生後1~5日目の間に酸化ストレスへの抵抗性を高める薬剤を飲ませたところ、2週間後のCKDへの進行が抑えられることがわかった。一方で、発生7日目以降に薬を飲ませても、CKDの病態は改善されなかったという。
この研究により、酸化ストレスが腎臓病を進行させる原因となることが明らかとなった。また、急性腎障害となった後の早い時期に、酸化ストレスへの抵抗性を高めることによって、CKDへの進行を抑制できることが示されたという。同研究でマウスに投与した薬剤と同様の薬剤については、すでに腎臓病に対する臨床試験が行われている。今回の研究成果は、CKDの発症・進行を防ぐための新薬開発に大きく貢献すると、研究グループは述べている。
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