今回、研究対象とするのは慢性疾患で継続的に薬物療法を実施しており、口頭で研究の説明を行い参加の同意を得られている患者。薬局店頭で「服薬状況確認シート」を手渡し、その場で自宅での残薬の有無、前回処方薬の飲み忘れの有無などの設問に対して、該当項目を丸印で患者自身にチェックしてもらう。設問には、海外の服薬アドヒアランス尺度(MMAS-4)の日本語翻訳版「薬を飲み忘れたことがある」「薬を飲むことに関して無頓着である」「調子がよいと薬を飲むのをやめる」「体調が悪くなると薬をやめる」――の4項目を記載。
また、確認シートには「朝」「昼」「夕」「寝る前」の服薬状況について、全て指示通りに飲めた場合を「10」、まったく飲めなかった場合を「0」として11段階の点数での自己評価や、薬を服用できなかった理由も選択方式で回答してもらう。これらは、別の「服薬情報提供書」に薬剤師のコメントと共に記入し、処方元の医師にフィードバックし、患者のアドヒアランス向上に向けた減薬や処方見直しに活用してもらう。
各薬局は、服薬指導時に記載内容を確認し、薬剤師判断の服薬状況スコアを確認シートの薬剤師使用欄に記載。その上で▽節薬バッグ運動送信用紙▽服薬状況確認シート▽処方箋コピー――の3点を、データの集計・分析を行う九州大学に送信するという手順で行われる。
今回の臨床研究を担当する福岡市薬副会長の木原太郎氏は「これまでの節薬バッグ運動は単なる残薬調整だったが、薬剤師が介入することで服薬アドヒアランスがどう変化するか数値化したいと考えた」と説明。一方で、「日頃の服薬指導業務の中でも、患者のアドヒアランスを確認するためにも非常に有効なツールになる」とし、処方医への患者服薬情報の提供を通じて共同薬物治療管理業務(CDTM)にもつなげていきたい考えだ。
現在、同薬会員32薬局が今回の臨床研究に登録。「少なくとも1軒2症例を目標として60症例は集めたい」(瀬尾氏)としている。また、大分市薬剤師会でも11月から同研究への参画を決めており、さらなる登録薬局数の広がりも期待される。