厚生労働省は、健康な時から病気や介護が必要な状態になるまでの国民の基本的な保健医療データを統合した情報基盤「PeOPLe(ピープル)」を整備し、2020年度を目標に段階的に運用を開始し、25年度までに本格運用をスタートさせる予定。薬剤師や医師などの医療専門職が服薬歴や既往歴を把握し、効果的な治療法を提案できるようになるほか、全ての患者や国民もアクセスでき、活用できる開かれた情報インフラとして健康管理などに活用してもらう狙いだ。
塩崎恭久厚生労働相の私的懇談会「保健医療分野におけるICT利活用推進懇談会」が提言をまとめた。情報基盤“ピープル”は、性別や年齢などの基本情報や既往歴、服薬歴、アレルギー、副作用等の患者データを統合し、医療用のIDを活用して管理するというもの。データは薬剤師や医師などの医療専門職が共有することにより、過去に処方した薬を把握して効果的な治療法を提案できるようになるほか、処方された後発品について効果があったかどうか判断することや、在宅医療の現場で医師、薬剤師、看護師など医療者間の情報共有を円滑にし、効率的できめ細かな対応ができるとしている。
救急搬送時や災害時に、かかりつけではない医療機関を受診した場合や発作などで患者本人が意識を失っているケースでも、データベースに蓄積されている患者情報をもとに最適な治療が受けられるようになる。患者自身もデータベースである“ピープル”にアクセスできるようにすることで、病気を予防するための生活習慣など、健康管理に役立つ情報を提供する。ただ、個人情報を取り扱う観点から“ピープル”への参加には本人の同意が必要としている。
また、統合したデータを産官学が活用できる「データ利活用プラットフォーム」も同時に整備する。製薬企業や研究機関、自治体などの利用者のニーズに応じて、データを匿名化して提供する。
利用者には、人工知能(AI)を活用してデータの質向上や効率化を行い、革新的創薬の実現や医薬品の安全対策などの成果として、社会に還元してもらう考えだ。