アドシルカ、オプスミットに続く同社3剤目のPAH治療薬
日本新薬株式会社は10月18日、都内で「日本新薬“ウプトラビ”プレスセミナー」を開催。同社PAH領域推進部長の吉村和久氏、国立循環器病研究センター 肺高血圧症先端医学研究部特任部長の大郷剛氏らが講演した。
国立循環器病研究センター 肺高血圧症先端医学研究部
大郷剛 特任部長
ウプトラビ(R) 錠(一般名:セレキシパグ)は日本新薬が創製し、アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン株式会社と国内で共同開発した肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬。9月28日付けで製造販売承認を取得した。
PAHは、肺動脈の血圧が何らかの原因で異常に上昇する予後不良な疾患であり、原因が不明な「特発性」、遺伝性・膠原病や先天性心疾患など特定の疾患が伴う「二次性」の2つに大きく分類される。治療には、プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)、ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)などが用いられている。
ウプトラビは、経口投与が可能な世界初の選択的IP受容体作動薬。血管拡張作用や血管平滑筋細胞の増殖阻害作用等を有し、PAHに対して長期的な有効性を示すという。導出先のスイス・アクテリオン社が実施した第3相国際共同試験の結果により、すでに欧米で承認され、米国では2016年1月から、欧州でもドイツでは同年6月から販売されている。
日本新薬はこれまでにPDE5iのアドシルカ(R)(一般名:タダラフィル)(イーライリリー社が開発)を2009年に、ERAのオプスミット(R) (一般名:マシテンタン)(アクテリオンが販売、両社でプロモーション)を2015年に、それぞれ承認取得している。領域推進部長の吉村氏は「IP受容体作動薬のウプトラビが先月末に承認されたことで、日本新薬はPAHに関わる3つの薬を提供できる会社となった。これは、世界でも日本新薬1社だけ」と強調した。
注射薬から内服薬への切り替えという選択も
PAHの治療について、大郷氏は「この病気は単剤で治療することは困難だが、IP受容体作動薬、ERA 、PDE5iという複数の薬剤を活用することで、患者の予後や症状を良くなるという報告が寄せられつつある」とし、未だ報告できる段階ではないが「循環器病センターでも初期から3剤を併用する治療を積極的に行っており、単剤や途中から併用する治療よりも効果は上がっている」と最新の動向を紹介。
ウプトラビが属するIP受容体作動薬については、「静脈注射や皮下注射、吸入などさまざまな剤型があったが、注射薬の使用を拒む患者もいるなど、剤型の問題で生きるチャンスを逃した患者もいた」と課題を語る。今回承認を得たウプトラビは「内服薬であるため、これまでよりも多くの患者に使用できる。また、強力な血管拡張作用があることから、注射薬で治療をしていたような患者でも切り替えが考えられる。内服の併用療法で助かる患者が今まで以上に多く出てくるのではないか。今後の肺高血圧症治療を変える可能性のある、有望な治療が出てきたと考えている」と期待を寄せた。
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・日本新薬株式会社 ニュースリリース