B細胞の除去による治療効果が海外で報告
慶応義塾大学病院は10月19日、ステロイド治療で十分な効果が得られない難治性天疱瘡(てんぽうそう)患者における、抗CD20抗体(一般名:リツキシマブ)療法の有効性および安全性を評価するための医師主導治験を10月4日から開始したと発表した。この治験は、慶應義塾大学医学部皮膚科学教室の天谷雅行教授、山上淳専任講師らの研究チームが行うもの。他に国内3施設(北海道大学、岡山大学、久留米大学)での施行も予定されているという。
この治験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)(難治性疾患実用化研究事業)の研究課題「ガイドライン最適化を目的とした自己免疫性水疱症に対する抗CD20抗体療法の評価」の一環として行われるもの。天疱瘡は国指定の難病で、細胞間の接着に重要な役割を果たす分子(デスモグレイン1、3)に対する自己抗体により、皮膚や粘膜に水疱、びらんを生じる自己免疫疾患。現在は、ステロイド剤内服を中心とした免疫全般を抑制する治療法が中心だが、ステロイド治療に抵抗性を示し、従来の治療法では症状が治まらない症例が存在するという。
ステロイド治療抵抗性の症例に対しては、CD20のモノクローナル抗体であるリツキシマブによる治療が期待される。天疱瘡の原因となる自己抗体は、CD20陽性のB細胞から産生されると考えられているが、リツキシマブはこのB細胞を除去することで天疱瘡に対する治療効果を発揮。天疱瘡に対するリツキシマブの有用性は海外ですでに報告されており、日本でも今回の治験に先行して行われた探索的研究で有効性が示唆されていた。
治験結果をもとに、治療抵抗性の天疱瘡に対するリツキシマブの薬事承認へ
今回の治験は、プレドニゾロン(PSL)使用中(またはPSLと「最低限の併用療法」の薬剤のうち1剤併用中)の天疱瘡の確定診断例で、PSLを10mg/日に減量するまでの間に臨床症状スコア(PDAI)の再上昇を認めた20歳以上80歳以下の患者が対象。同意取得時点でのPSLの内服量を継続したまま、リツキシマブ1,000mgを2週間隔で2回投与する(初回投与は入院、2回目投与は入院または外来で実施)。PSLは決められたスケジュールに従って減量、リツキシマブ投与開始24週後の時点で寛解に到達した症例の割合を主要評価項目としているという。
研究チームは今回の治験の結果をもとに、治療抵抗性の天疱瘡に対するリツキシマブの薬事承認をめざしており、既存の治療法のみでは寛解に到達できなかった、難治性の天疱瘡症例における新規治療法として期待が寄せられる。また、ステロイドを減量できずに苦しんでいる患者において、リツキシマブの使用によりステロイドの副作用リスクを減らせる可能性があり、難病に対する新規治療という面からも有益性が期待できると、研究グループは述べている。
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・慶応義塾大学 プレスリリース