中川氏は、幸野氏の講演での発言について、「非常に驚いたがこれは事実か」「発言は中医協委員としてのものか」と質した。幸野氏は、「中医協委員というより、健保連の一理事として発言したつもり」としたものの、発言内容については、「保険者は医師の処方権、薬剤師の調剤権には格差があると感じている。以前から持っている持論を話した」と否定はしなかった。
また、医師の強い処方権のもとで、医薬分業が進んだ結果、多くの薬局・薬剤師が地理的な優位性のみをビジネスモデルにしたことにも「問題はある」とし、「お叱りの意味も込めて、医薬品に関しては医師と同等の立場で調剤権を発揮できるように頑張ってほしいというエールを送るつもりで、健保連の理事としての私見を申し上げた」と説明した。
中川氏は、中医協委員が公の場で発言した場合、「もはや個人的な意見ではない。しかも次期改定の重要事項に位置づけるとまで言っている」と指摘。
診断結果に基づき、医師が薬物治療が必要かどうか、どの薬を使うかを判断し、処方箋を発行して薬剤師が調剤するという仕組みについて、「格差がありすぎて、医薬分業を歪めているというのは、非常におかしな話。医師の処方権と薬剤師の調剤権は全く違う。どこでバッティングするのか」と疑問視した。
これに対し幸野氏は改めて、処方箋に記載されている後発品への変更不可欄について、「おかしい」と述べ、「医師は一般名を処方し、後発品への変更は薬剤師が判断すべきと思っている」との持論を展開。
また、薬剤師が残薬を確認した場合の対応について、「医師に疑義照会をしてからではなく、薬剤師自ら調剤できるような仕組みを作っていくべき」とし、「そういう意味での調剤権の拡大で、薬剤師が疾患の治療にどの薬を用いるかを決めるべきとまでは言っていない」と理解を求めた。
診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、「日薬としても個人的にも、調剤権を拡大するということではなく、薬剤師が調剤する上でどういう義務を負っているのかを考える」ことの重要性を示し、「医師の負担軽減が重要視される中で、医師と薬剤師がお互いの理解と連携の中で機能を発揮し、義務を果たすことがわれわれに求められている」と述べた。