世界115か国で承認済み、いよいよ日本でも
骨粗しょう症治療薬「リクラスト」(一般名:ゾレドロン酸)が9月28日に承認されたことを受け、旭化成ファーマ株式会社は10月18日、都内で新製品説明会を開催。鳥取大学医学部保健学科教授 萩野浩氏と沖本クリニック院長 沖本信和氏による講演が行われた。
鳥取大学 医学部 保健学科 教授 萩野浩氏
リクラストは年1回点滴静脈内投与の骨粗しょう症治療薬として2007年に米国、欧州での承認を皮切りに、世界115か国で承認、使用されている。萩野氏は日本における治験「ZONE Study」の参加医師。今回の試験でリクラストは、主要評価項目である新規椎体骨折の発生をプラセボに比べ65%抑制(p=0.0016)、副次評価項目の非椎体骨折も45%の抑制効果(p=0.0292)を示し、非椎体骨折を評価して有意差のついた国内初の試験であると述べた。
さらに萩野氏は、骨粗しょう症患者では骨折が連鎖することに注意が必要であり、初めは手首や上腕、椎体骨折などから始まり、やがては大腿骨近位部骨折に至ること、一度大腿骨近位部骨折を起こした患者は対側でも新たな骨折を起こしやすいこと(二次骨折)を指摘。海外の検討では、リクラスト投与により二次骨折の発生だけでなく、死亡の累積発生率も有意に抑制されている(それぞれp=0.001、p=0.01)。この結果は、骨粗しょう症治療により骨折を予防することで、生命予後が改善されることを示しているという。
年1回投与なら、通院が難しい患者でも治療継続可能になるか
沖本クリニック 院長 沖本信和氏
続いて、高齢化が進む瀬戸内海島嶼部でクリニックを営む沖本氏が登壇。手術が必要な大腿骨近位部骨折は、島内で治療ができず、島外の急性期病院で治療する。退院後も引き続き島外の介護施設への入所が必要になる例もあり、住み慣れた故郷に戻れなくなる高齢者がいるという、島嶼部ならではの実情を紹介した。同氏は、骨折の連鎖を食い止めるには、手首や椎体骨折など最初の骨折を機に骨粗しょう症の治療を開始し、きちんと治療を継続することがいかに重要であるかを訴えた。
沖本氏は、後期高齢者における骨粗しょう症診療の実態調査結果から、大腿骨近位部骨折後の骨粗しょう症治療薬使用状況について、未治療例が45%、2年以内の治療中断例が23%に上ると紹介。また、治療の中断理由に関する別の報告から、患者自身の判断よりも、他疾患の発症・増悪や関連施設間の治療連携ミスによるものが多いこと、維持期の骨粗しょう症治療は、いわゆる「かかりつけ医」が担うケースが多いことを紹介し、施設間、診療科間の連携が重要であると指摘した。
年1回投与のリクラストは、治療に関わる施設のいずれかで投与ができれば脱落を防ぐことができるため、二次骨折を予防したい患者や通院困難な患者のコンプライアンス向上を目指すうえで有用な選択肢となる、と沖本氏。ただし注意すべき有害事象として、通常のビスホスホネート製剤に比べ、投与開始時の発熱が多くみられることから、処方にあたっては十分に患者に説明する必要があると述べた。
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