心房細動患者の過去の病歴などをもとに脳梗塞リスクを計算
群馬大学は10月17日、過去の心エコー図検査データを詳細に解析することで、男性より女性のほうが心房細動による脳梗塞リスクが高いというメカニズムのひとつを解明したと発表した。この研究は、同大学循環器内科とオーストラリアのタスマニア大学との共同研究によるもの。研究成果は、9月12日に国際医学雑誌「Circulation:Cardiovascular Imaging」でオンライン公開されている。
画像はリリースより
心房細動は最も多くみられる不整脈だが、その治療の最大の目的は脳梗塞の予防。現状の診療ガイドラインでは、「脳梗塞のリスク評価」と「脳梗塞予防治療」が推奨されている。脳梗塞のリスクは、心房細動患者の過去の病歴などをもとに脳梗塞リスクを計算するが、以前から、男性よりも女性のほうがこの心房細動による脳梗塞のリスクが高いことが知られていた。しかし、明らかなメカニズムはわかっていなかった。
心エコーによる左心房機能の評価で、最適な治療法の選択へ
脳梗塞の原因となる血栓は、心臓の4つの部屋のうち「左心房」にできる。研究グループは今回、414人の左心房の機能を心エコーにて詳細に検討。そして、左心房の機能と脳梗塞リスクとを男女別に分けて比較した。
その結果、「女性は男性に比べ、脳梗塞のリスクが上がれば上がるほど左心房の機能が低下すること」が明らかとなった。左心房の機能が低下すれば、そこに脳梗塞の原因となる血栓ができやすくなるため、これが今まで知られていなかったメカニズムのひとつと考えられるとしている。
脳梗塞予防治療の主役は抗凝固薬だが、同時に出血のリスクも増えるため、より正確なリスク評価が求められている。今後、問診による脳梗塞のリスク評価に加え、心エコーで左心房機能を評価することで、患者一人ひとりに応じた、きめ細やかなリスクの評価および最適な治療法の選択が期待されると、研究グループは述べている。
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