女性アスリートにおけるPMS・PMDDに関する貴重な研究
近畿大学は10月18日、月経前症候群(PMS)、またその重症型である月経前不快気分障害(PMDD)が、疲労骨折発症の一因となる可能性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大学東洋医学研究所の武田卓所長らの研究グループによるもの。同研究成果は、英国のオンライン医学誌「BMJ Open」に同日付けで掲載されている。
疲労骨折は、男性より女性の方が多く発症するとされ、月経不順は疲労骨折のリスク要因だが、疲労骨折の多くが卵巣機能正常状態でも発症している。また、PMS・PMDDは、月経前の不快な精神・身体症状が特徴で、月経痛と並び卵巣機能正常女性のQOLを著しく損なう。
これまで女性アスリートの研究は、「エネルギー不足」「月経異常」「骨量減少」からなる「女性アスリートの三主徴」に関するものが大部分であり、月経異常がある状態では発症しないPMS・PMDDについてはほとんど研究されてこなかった。同研究グループは、かねてよりPMS・PMDDの研究に取り組んでおり、2014年には女性アスリートの44%がPMS・PMDDによるパフォーマンス障害を自覚していることを報告していた。
PMS・PMDDが認知・運動能力低下を引き起こし、疲労骨折発症の一因に
今回、研究グループは、高校2校の女子生徒1,818人を対象に、月経周期や初経等の月経の状態、月経前の精神・身体症状や月経痛に関する重症度、クラブ活動、疲労骨折既往を評価する自記式アンケート調査を実施。有効例のうち、現役運動部員として活動する506人中、月経周期が正常である394人を解析した。
その結果、中等度~重度のPMS疑い例が8.9%、PMDDの疑い例が1.3%で、16.8%に疲労骨折が認められた。また、PMS症状は月経痛と比較して作業効率、対人関係、試合・練習でのパフォーマンスへ影響を与えることが明らかになったという。疲労骨折の有無別にPMS症状の重症度を比較すると、摂食障害、身体症状、パフォーマンス障害においてより症状が重いことが確認された。さらに、疲労骨折既往に関してのロジスティック回帰分析では、PMSの身体症状があることで疲労骨折既往のリスクが1.66倍となり、「競技のための体重制限」「週当たりの練習時間」に加えて、「PMS身体症状」が有意なリスク要因であることが明らかになったという。
今回の研究によって、卵巣機能正常状態での疲労骨折とPMS・PMDDとの関連性が明らかとなった。PMS・PMDDに対する適切な管理・治療は、競技でのパフォーマンス向上だけでなく、疲労骨折発症の予防にもつながることが期待できると、研究グループは述べている。
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・近畿大学 ニュースリリース