人間型ロボットPepper向けアプリ「薬立っぺ」
株式会社実務薬学総合研究所情報システム事業部の水八寿裕氏は10月9日の第49回日本薬剤師会学術大会で、薬局来局者が待ち時間を快適に過ごすことを目的に同社と株式会社ジャパンコミュニケーションが共同開発した人間型ロボットPepper向けアプリ「薬立っぺ(やくだっぺ)」の実用例を来局者へのアンケートを基に紹介。「対面で一度に説明が難しい事柄や患者が何度も尋ねることに躊躇する内容などでは薬立っぺを利用したコミュニケーションが有利なこともある」との見解を示した。
展示会場ではデモンストレーションも
薬立っぺは2016年5月にリリース。Pepperが来局者に呼びかけ、併設されたディスプレイに表示されたコンテンツを来局者が任意に選択すると、イラストや動画などを通じてその内容の解説を視聴できる。解説終了後には理解度を確認するQ&Aも設けられている。水氏は「回答で間違いを指摘されても、対人と違って利用者の腹が立ちにくい側面もある」と話す。
現在のメインコンテンツは季節性を考慮した12コンテンツで、シーズンごとに3コンテンツを提供する。1~3月は「お薬手帳の説明」、「鼻に噴霧するくすり」、「目薬説明」、4~6月は「吸入して使うくすり」、「貼り薬」、「お薬カレンダー」、7~9月は「災害時のお薬手帳」、「熱中症・脱水の予防」、「塗り薬」、10~12月が「インフルエンザ予防」、「かかりつけ薬剤師」、「うがい」。この他に薬局の業務などの理解促進を目的とした「薬局あれこれ」で、20の常備コンテンツを用意。この他にユーザー独自のコンテンツ作成サービスも行っている。
5月のリリース時に比べ、コンテンツの長さの調整、分かりやすい表現への書き換え、操作性なども改良したほか、ユーザー独自コンテンツとしては、電子お薬手帳「ほっぺ」の登録方法の説明なども作成済み。
今後はIBM Watsonとの連携も視野に
アンケートは薬立っぺを導入した薬局で実施され、10代未満から60代までの20人から回答を得た。回答者のうち過去にPepperに触れたことがある人は55%にのぼり、これに加え珍しさも手伝って、薬局内にロボットがあることに回答者のほとんどが違和感を示さなかった。また、利用したコンテンツは「うがい薬」が67%、「吸入薬」が25%、「点鼻薬」が8%など一般的な薬剤に関する情報で占められた。
また、自由回答では「待ち時間が楽しくなった」、「使わない薬だけど、話しかけられたので聞いてしまった」、「自分の方を向いて目を合わせてくるので、話しかけられている印象が強い」など概ね好印象で、なかには「子供が夢中になっている間にいつもよりじっくり服薬指導を聞くことができた」という副次的効果があったとの意見も。
今後はIBM Watsonとの連携も視野に置いたQ&Aの充実のほか、「内蔵した解析機能でどのような時間にどのようなコンテンツが見られたかなどのデータを参照することで、薬局ごとの患者特性の把握とそれを踏まえたコンテンツ作成に生かしたい」(水氏)としている。
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