医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 神経障害性疼痛が時刻により変動する仕組みを解明―九大

神経障害性疼痛が時刻により変動する仕組みを解明―九大

読了時間:約 1分13秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2016年10月19日 PM02:20

副腎皮質から分泌されるホルモンの概日リズムに着目

九州大学は10月17日、副腎皮質から分泌されるホルモンの概日リズムに着目して、神経障害性疼痛が時刻により変動する仕組みを明らかにしたことを発表した。この研究は、同大大学院薬学研究院の大戸茂弘教授、小柳悟教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Nature Communications」オンライン版に10月14日付けで掲載されている。


画像はリリースより

神経障害性疼痛は、軽い触刺激でも激痛を引き起こす「痛覚過敏」が特徴で、神経のダメージで発症する慢性的な疼痛。発症には、脊髄のミクログリアにおけるプリン受容体の増加が重要な役割を担っており、この受容体はアデノシン三リン酸()で刺激されて強い痛みを引き起こす。一方で、神経障害性疼痛における痛覚過敏の程度は、時刻によって変動することが知られていたが、その仕組みは明らかにされていなかった。

ATP放出の概日リズムが、神経障害性疼痛の時刻の違いを惹起

同研究グループは今回、マウスを用いた実験によって、副腎皮質からのホルモン分泌が上昇する時間帯に、脊髄のアストロサイトからATPの放出が増えることを見出した。放出されたATPはミクログリアのプリン受容体を刺激して痛みを悪化させており、副腎皮質ホルモンによって生じるATP放出の概日リズムが、神経障害性疼痛の時刻の違いを引き起こしていることを突き止めたという。

多くの生物は、地球の自転に伴う外部環境の周期的な変化に対応するため、自律的にリズムを発振する機能()を保持しており、この体内時計の働きによって、睡眠・覚醒のサイクルやホルモン分泌などに概日リズムが生じている。今回研究対象にした神経障害性疼痛以外にも、様々な疾患の症状に概日リズムが認められていることから、体内時計の視点から病気のリズムの仕組みを解明し、新しい治療薬の開発や疾患の予防に役立てていきたいと、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 前立腺がん、治療決定時SDMが患者の治療後「後悔」低減に関連-北大
  • 糖尿病管理に有効な「唾液グリコアルブミン検査法」を確立-東大病院ほか
  • 3年後の牛乳アレルギー耐性獲得率を予測するモデルを開発-成育医療センター
  • 小児急性リンパ性白血病の標準治療確立、臨床試験で最高水準の生存率-東大ほか
  • HPSの人はストレスを感じやすいが、周囲と「協調」して仕事ができると判明-阪大