移植後の免疫拒絶反応を評価するため、同種移植を検討
京都大学は10月14日、ヒトに近いカニクイザルを用いて、重症の心臓病患者に対する新しい再生医療として、iPS細胞を使った心筋再生治療法を開発したと発表した。この研究は、京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)の南一成特定拠点助教、信州大学バイオメディカル研究所/医学部附属病院循環器内科の柴祐司准教授らの研究グループによるもの。同研究成果は、英国の科学雑誌「Nature」に10月10日付けで掲載されている。
画像はリリースより
生体のさまざまな組織に分化する能力をもつ多能性幹細胞(ES細胞またはiPS細胞)は、無限に近い増殖能力と多くの細胞に分化する能力をもっているため、再生医療への応用が期待されている。一方で、心筋梗塞をはじめとする心臓病は罹患率・死亡率ともに高く、新たな治療法の開発が望まれている。
信州大学では、ヒトES細胞から心臓の筋肉を構成する細胞(心筋細胞)を作製し、モルモット心筋梗塞モデルに移植したところ、心筋梗塞後の心臓機能が回復することを2012年に「Nature」で報告した。しかし、この研究を含めこれまでの研究はヒトから作製した(ヒト由来)心筋細胞を別の動物に移植する「異種移植」による検討であり、移植する細胞と移植を受ける宿主が異なる動物種であるため、移植後の免疫拒絶反応を評価することは不可能だった。
拒絶反応の影響をほとんど受けずに生着、心筋梗塞後の心臓機能の回復を確認
研究グループは今回、株式会社イナリサーチが供給体制を確立した免疫拒絶反応が起きにくい特殊なカニクイザルからiPS細胞を作製。通常のカニクイザルに心筋梗塞を発症させ、カニクイザル同士(同種移植)で心筋細胞移植を行った。その結果、移植された心筋細胞はほとんど拒絶反応の影響を受けずに生着し、心筋梗塞後の心臓機能の回復が確認できたという。
心筋細胞を移植された動物において、一過性に不整脈の増加が副作用として見られたことから、今後副作用を軽減していくための研究が必要であると、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・京都大学 研究成果