凝集塊の移し替えに伴う細胞へのストレスなど、従来品での課題を解決
住友ベークライト株式会社は10月11日、幹細胞等の凝集塊の形成から成熟培養までの一連のプロセスを同一容器内で実施できる新規三次元細胞培養容器「PrimeSurface(R) 96 スリットウェルプレート」の販売を、10月1日より国内で開始したと発表した。
画像はリリースより
同製品は日本医療研究開発機構(AMED)の「再生医療実現拠点ネットワークプログラム技術開発個別課題」で採択された「立体浮遊培養の再生医療への実用化のための自動化技術の開発」の成果のひとつである細胞培養容器を、同社が製造、販売するもの。同社はこれまでに独自の表面処理技術を用いた、多数個の均一な凝集塊を容易に形成できる三次元細胞培養器PrimeSurface(R)シリーズを開発・販売。幹細胞を使った再生医療の研究や、がん細胞を使った抗がん剤の薬効評価などで広く用いられている。
しかし既存製品は、各ウェルが独立した構造になっているため、96個のウェルすべてについて個別に培地交換作業を行う必要があり、作業が非常に煩雑になることや、凝集塊を移し替える際に細胞にストレスが加わること、操作中に誤って凝集塊を吸引・廃棄しかねないこと、ひとつの大きなシャーレ内で凝集塊どうしが接触・融合してしまうことなどが課題だった。
再生医療の実用化推進に貢献も
同社はこれらの課題を解決するために、表面処理技術と構造設計技術を駆使して、幹細胞などの凝集塊の形成から成熟培養までのプロセスを同一容器内で実施できるPrimeSurface 96 スリットウェルプレートを開発。同製品は96個のウェルそれぞれの上部に培地が出入りできる細い開口部(スリット構造)を設けた三次元培養プレートで、このスリット構造は、凝集塊が通過しにくい幅に最適化されており、プレートのコーナー部分から培地を吸引または添加するだけで、各ウェル内に凝集塊が入ったままの状態でプレート全体の培地を一度に交換することが可能。また、従来製品よりも多くの培地をプレート内に保持できる設計のため、凝集塊をシャーレ等に移し替えることなく長期間にわたる成熟培養が可能となった。
培地交換をはじめ、凝集塊の形成から成熟培養までのプロセスを簡便に実施できる同製品は、操作の効率化に加えて凝集塊の質の向上にも寄与する可能性があり、再生医療の実用化推進に貢献できると、同社は述べている。
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