非小細胞肺がん患者を対象とした第3相試験の結果を発表
スイス・ロシュ社は10月9日、デンマークのコペンハーゲンにて開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2016年次集会において、「TECENTRIQ」(一般名:atezolizumab)の主要な第3相臨床試験であるOAK試験の良好な成績を発表した。
TECENTRIQは、腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞に発現するタンパク質であるPD-L1を標的として結合するように設計された開発中のモノクローナル抗体。PD-L1は、T細胞の表面上に見られるPD-1、B7.1の双方と相互作用することにより、T細胞の働きを阻害する。TECENTRIQがこの相互作用を阻害することでT細胞が活性化され、がん細胞を効率的に検出し攻撃する能力を取り戻すことが可能になるという。
今回結果が公表されたOAK試験は、白金製剤ベースの化学療法施行中または施行後に病勢が進行した局所進行または転移性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者1,225人を対象に、TECENTRIQの有効性と安全性をドセタキセルと比較した非盲検無作為化多施設共同国際第3相臨床試験。主解析の対象となったのは、最初に登録された850例で、3週間ごとにTECENTRIQ(1,200mg静注)またはdocetaxel(75mg/m2静注)を投与する群に1:1で割り付け、許容不能な有害事象または病勢進行が認められるまで投与を継続。主要評価項目は、全症例(ITT集団)およびPD-L1発現症例の全生存期間(OS)とした。
PD-L1の発現状況にかかわらず化学療法に比べ全生存期間を有意に延長
その結果、PD-L1の発現の有無にかかわらず全症例において、TECENTRIQ群のOS中央値は13.8か月であり、ドセタキセルによる化学療法と比べ4.2か月の延長を示した。また、TECENTRIQの有害事象は、これまでに観察されたものと一致していたという。
FDAは、標準化学療法(白金製剤ベースの化学療法、EGFR遺伝子変異陽性またはALK陽性肺がんに対しては適切な分子標的療法)施行中または施行後に病勢が進行したPD-L1陽性NSCLC患者への投与において、TECENTRIQを画期的治療薬に指定。また、同社が提出したNSCLCに対する生物製剤承認申請(BLA)は優先審査に指定されており、2016年10月19日までに承認の判断が行われる予定という。
さらに同社は、早期および進行期の肺がん患者を対象としてTECENTRIQ単独または他の治療方法との併用について検討する、8種類の第3相臨床試験を実施中。なお、国内では、NSCLCを対象とした第2相国際共同治験ならびに第3相国際共同治験、NSCLCの術後補助療法の第3相国際共同治験、小細胞肺がんを対象とした第3相国際共同治験、膀胱がんを対象とした第3相国際共同治験、筋層浸潤膀胱がんの術後補助療法の第3相国際共同治験、腎細胞がんを対象とした第3相国際共同治験、および乳がんを対象とした第3相国際共同治験に参加している。
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