一般的な検査で診断が困難な微小血管狭心症、診断方法確立へ前進
東北大学は10月11日、これまで診断が困難であり、治療方法確立の重要性が認識されてきた「微小血管狭心症」に対して、血中セロトニン濃度が新規のバイオマーカーとなることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明教授の研究グループによるもの。研究結果は「European Heart Journal」誌に掲載された。
画像はリリースより
近年、虚血性心疾患の発症機序として注目されている微小血管狭心症は、心臓カテーテル検査による冠動脈造影のみでは診断が困難で、しばしば見過ごされることが多かった。同疾患は閉経後の女性に多く発症し、正確な診断には侵襲的な心臓カテーテル検査が必要であるが、これらの検査でも異常診断が難しく、簡便な診断方法の確立が待たれていた。
血漿セロトニン濃度が、微小血管狭心症診断の基準値に
研究グループは、アセチルコリン冠動脈内注入による冠攣縮誘発試験中に、心表面の冠動脈に有意な攣縮が認められないにもかかわらず、自然発作と同様の胸部症状、虚血性心電図変化、もしくは心筋内乳酸産生などの心筋虚血の直接・間接的所見が認められた際に、微小血管狭心症と診断。同研究の対象となった患者198例のうち、66例(33%)が微小血管狭心症と診断されたという。
同研究で着目したセロトニンは、強力な血管収縮作動作用と血小板凝集作用を有する血管作動物質として古くから知られている。今回の研究において、微小血管狭心症患者ではこの血漿セロトニン濃度度が上昇することが明らかとなった。さらに、微小血管障害の指標のひとつとして知られている冠動脈造影時のTIMI frame countとも有意な正の相関関係が認められた。加えて、血漿セロトニン濃度が9.55nmol/L以上であることが、微小血管狭心症診断の基準値になることがわかったという。
今回の研究成果は、血漿セロトニン濃度が微小血管狭心症の新たなバイオマーカーになることを世界で初めて明らかにした重要な報告として、診断能の向上、病態の解明、治療薬の開発といった今後の研究に期待が寄せられている。
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