Keap1-Cul3複合体の細胞内量や組成、ストレス応答のメカニズムわからず
東北大学は10月7日、同大学大学院医学系研究科の鈴木隆史講師、山本雅之教授らが、酸化ストレスなどから細胞を保護する機能を制御する転写因子であるNrf2が量的調節機構によりストレスに応答して活性化する仕組みを解明したと発表した。この成果は、米国科学雑誌「Molecular and Cellular Biology」のオンライン版に10月3日付けで公開された。
画像はリリースより
Nrf2は、酸化ストレスや環境中の毒物(親電子性物質のことが多い)によって活性化する転写因子であり、さまざまな局面で細胞を環境由来のストレスから保護する機能を制御している。Nrf2活性化物質は、自然界にも数多く見出されており、それらの物質の経口投与によってNrf2を活性化することが可能だ。そのため、Nrf2が体内で生体防御に働く仕組みが詳細にわかれば、Nrf2活性化剤を薬として利用できるものと期待されている。
Nrf2は非ストレス状態ではKeap1-Cul3複合体によって迅速に分解され、その活性発現は抑制されているが、一方、ストレス状態になると、Nrf2は安定化し、活性化して生体防御に働く。しかし、Keap1-Cul3複合体の細胞内量や組成、またストレス応答のメカニズムの詳しい仕組みはこれまでわかっていなかった。
Nrf2活性化剤開発の加速に期待
今回、研究グループは、生体防御遺伝子を活性化する転写因子Nrf2、およびNrf2を調節するKeap1とCul3それぞれの細胞内の存在量を世界で初めて明らかにした。その結果、ストレスに応答しての細胞内のNrf2量は急激に増えるが、Keap1とCul3の量は、ほとんど変化しないことがわかった。
また、種々の条件下でのKeap1-Cul3複合体の組成を明らかにすることに成功したが、その結果は同時に、同複合体の量と組成はストレス刺激によって実質的に変化しないことを見出した。この成果により、ストレスに応答してKeap1-Cul3複合体の活性が低下し、その結果Nrf2量が増えることで、生体防御にはたらく酵素群をコードする遺伝子が活性化することがわかったとしている。
今後、研究を進めていくことで、Nrf2活性化メカニズムの分子基盤の理解が進み、Nrf2活性化剤の開発が加速することが期待されると、研究グループは述べている。
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