エナラプリル投与と比較しHRQLの相対スコアが高いことを示す
スイスのノバルティスは10月7日、PARADIGM-HF試験の新たな事後解析から、LCZ696を投与された患者ではACE阻害薬のエナラプリルを投与された患者と比較して、心不全入院に伴う健康関連の生活の質(HRQL)のスコア低下が約50%抑制されること、また全患者集団を対象に実施した別の事後解析から、HRQLスコアの低下が心血管死および心不全による入院のリスク上昇と関連することが示されたと発表した。これらの結果は、米国心不全学会の第20回年次学会総会で報告された。
LCZ696は1日2回投与する薬剤で、心臓に対する防御的な神経ホルモン機構(NPシステム、ナトリウム利尿ペプチドシステム)を促進すると同時に、過剰に活性化したレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)による有害な影響を抑制することで作用する。通常、ACE阻害薬またはARBに替えて、他の心不全治療薬と併用投与する。
HRQLスコアの低下が心血管死などによる予後悪化リスクの上昇に関連
今回発表された解析結果は、心不全における過去最大規模の臨床試験であるPARADIGM-HF試験データに基づくもの。同試験では6,981例の患者に対し、Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire(KCCQ)によるHRQL評価をランダム化時、4か月目、8か月目、および1年目に実施している。
その結果、同剤を投与された患者ではエナラプリルを投与された患者と比較して、KCCQのClinical Summary Scoreで評価した投与8か月目のHRQLの低下が抑制された。また、全対象患者集団におけるHRQLと予後との関連性を検討した解析では、治療4か月後における臨床的に意義のあるHRQLスコアの悪化(KCCQのClinical Summary Scoreが5ポイント以上低下することと定義)により、心血管死または心不全による入院を含む予後悪化リスクが上昇することも示されたという。
同剤は、欧州では左室駆出率が低下した症候性慢性心不全、米国では収縮不全を伴う心不全(NYHAクラスII~IV)の治療を適応としている。現在、日本人の慢性心不全患者を対象とした同剤の第3相臨床試験を実施中。
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース