がん幹細胞の維持に重要な遺伝子を阻害する新機序の低分子経口剤
大日本住友製薬株式会社は10月6日、がん幹細胞性阻害剤ナパブカシン(一般名、開発コード:BBI608)の進行性結腸直腸がん(単剤)を対象とした国際共同フェーズ3試験(CO.23試験)に関する最終解析結果の概要を発表した。この内容は、同試験のスポンサーであるCCTG(Canadian Cancer Trials Group)などにより、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の2016年年次総会(10月7日~11日、デンマーク)において発表されたが、それに先立ちESMOのウェブサイトで抄録が公表された。
ナパブカシンは、ボストン・バイオメディカル社が創製した開発中の抗がん剤。STAT3をターゲットとし、がん幹細胞の維持に重要な遺伝子を阻害する、新しいメカニズムの低分子経口剤だ。STAT3とは、遺伝子の転写に関与するタンパク質で、多くのがんで活性化されており、細胞のがん化に重要な働きをすることがわかっている。
CO.23試験は、前治療歴のある進行性結腸直腸がん患者を対象としたナパブカシンのプラセボ対照ランダム化国際共同フェーズ3試験。CCTGがスポンサーを務め、データの公表権を有している。2014年5月23日に開示した通り、独立安全性モニタリング委員会が、97例の登録患者を対象とした同試験の中間解析を実施した結果、安全性の問題は認められなかったが、DCR(病勢コントロール率)において、あらかじめ定められたクライテリア(判断基準)を達成しなかったため、新規の患者登録および登録済みの患者への投与を中止することが勧告された。
p-STAT3陽性患者でOSの有意な延長を確認
最終解析結果の概要によると、2013年4月から2014年5月に、282人の患者がランダム化(ナパブカシン138人、プラセボ144人)されたが、中間解析の結果、盲検を解除し、新規患者登録とプロトコルに沿った投与継続を中止した。患者の構成は、年齢の中央値が64歳(32~85歳)、男女比が男性65%、ECOG Performance Status(全身状態の指標)は0が28%、1が72%であり、5回以上の前治療歴がある患者の2割合が98%、抗VEGF療法による前治療歴がある患者の割合が89%、KRASが野生型の患者の割合が52%だった。全症例(ITT集団)におけるナパブカシン群とプラセボ群におけるOS(全生存期間)、PFS (無増悪生存期間)、DCRに有意差は認められなかった。
ナパブカシン群においてプラセボ群よりも多く観察された有害事象は、下痢(88% vs 32%)、吐き気(63% vs 47%)、食欲不振(56% vs 46%)などであり、いずれも有意差(p<0.05)が認められた。グレード 3以上の有害事象が1回以上観察された割合は、ナパブカシン群57%、プラセボ群40%であり、有意差(p<0.01)が認められた。ナパブカシン群の下痢については、グレード4は観察されず、休薬により回復可能なものだった。
投与8週時点のEORTC QLQ-C30による身体機能に関するQOL調査では、ナパブカシン群49%、プラセボ群29%であり、有意差(p=0.038)が認められた。p-STAT3を測定した251人のうち55人(22%)が陽性。プラセボ群においては、p-STAT3陽性患者は予後不良(OSの中央値はp-STAT3陰性4.9か月 vs p-STAT3陽性3.0か月 ハザード比2.3 p=0.0002)だったが、ナパブカシン群ではp-STAT3陽性患者においてOSの有意な延長が認められたとしている(ハザード比0.24)。
▼関連リンク
・大日本住友製薬株式会社 研究開発