老人斑が消失する反面、毒性物質オリゴマーが増加
順天堂大学は10月5日、新たに開発したアルツハイマー病の飲むワクチンが脳炎や消化器症状などの副作用を示さないことをサルで確認したと発表した。同時に、老人斑が消失する反面、毒性物質オリゴマーが増加することを発見したとしている。この研究は、同大学大学院医学研究科・認知症診断・予防・治療学講座の田平武客員教授、神経学講座の服部信孝教授ら、および佐賀大学などの共同研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Alzheimer’s Disease」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
アルツハイマー病のワクチン療法は、副作用である自己免疫性脳炎が起こったために、治験が中止になっている。このとき、ワクチンの免疫反応により老人斑アミロイドを除去することには成功したが、臨床的有効性は確認できず、神経細胞死はむしろ増加していた。これを受けて抗体療法の第3相試験が実施され、やはり老人斑アミロイドの除去には成功したが、有効性は認められなかったという。
研究グループは、効率の良い腸管免疫のアプローチに着目し、脳炎を起こさない飲むワクチンを開発。この飲むワクチンによる効果がマウスで認められたため、ヒトに応用する前にサルで安全性と有効性を確認する研究を行った。
飲むワクチンとオリゴマー抗体による後療法の特許を出願へ
この飲むワクチンを老齢サルに投与し、安全性を確認する実験を行った結果、従来のワクチン療法で見られた副作用の脳炎や消化器症状などは起こらず、この点での安全性は確認された。次に、有効性を調べるために脳の病理変化を調べたところ、老人斑が減少していることが確認した。
さらに、生化学的に調べると、脳の可溶性のアミロイドが増加していることが新たに分かった。そこで、脳の抽出液を電気泳動により詳しく調べたところ、毒性を有するオリゴマーが増加していることを発見。以上の結果から、ワクチンにより老人斑アミロイドが融解することで、老人斑は消失したが、その反面で毒性のあるオリゴマーが増加したものと考えられる。これが、これまでのワクチン療法、抗体療法の治験がうまくいかなかった理由と考えられるとしている。
これまで、アルツハイマー病に対するワクチン療法では老人斑はよく消えるのに臨床的有効性が見られないどころか、神経細胞死がむしろ増加しているという問題があった。今回の研究で明らかになった飲むワクチンによるオリゴマーの増加を示す結果は、その現象の裏付けとなり、新たな治療法の開発につながると研究グループは述べている。今後は、飲むワクチンとオリゴマー抗体による後療法を組み合わせることで、実際にオリゴマーの増加を伴うことなく老人斑が減少することを確認し、安全性と有効性を精査した後に、ヒトでの治験を行う予定としている。
なお、この飲むワクチンとオリゴマー抗体による後療法の組み合わせについて、研究グループはオリゴマー除去抗体と合わせて特許を出願した。
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・順天堂大学 プレスリリース