■未不活化原料用いワクチン製造
厚生労働省は4日、化学及血清療法研究所(化血研)が日本脳炎ワクチン「エンセバック」について、国の承認書に定められたウイルス不活化処理を一部実施していない原料を使って製造していたとして、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき報告命令を出した。化血研に弁明の機会を与えた上で、2週間以内に業務改善命令を出す予定。最終出荷製品は、安全性が確認できたとして出荷停止処分は行わない。1月に組織ぐるみの不正隠ぺいで110日間の業務停止命令を受けたにもかかわらず、再び不正が発覚した。厚労省は、今回の事態を化血研が報告せず、抜き打ち検査で発覚したことを重く見て、今後の対応次第で製造販売業許可の取り消し処分を下す可能性もあると警告。厳しい態度で臨む考えだ。
行政処分の対象となったのは、日本脳炎ワクチンについて承認書に定められたウイルス不活化処理をしていない一部原料を使って製造していた事実。さらに、業務停止命令を受けた薬機法違反の再発防止に向けた組織体制ができていないことである。
7月に化血研は厚労省に対し、承認書と製造実態に「軽微な齟齬」があると報告。8月に提出した資料には、不活化処理していない一部原料を使ってワクチンを製造していた今回の違反内容が記載されていたが、適切な説明を行わず、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が資料を精査したところ問題が浮上。厚労省が9月6、7日に抜き打ち検査を実施して違反が発覚した。
厚労省は、不正が繰り返され、組織体制の改革が進んでいない実態を由々しき事態と判断。化血研に役員の関与状況を踏まえた根本的な原因究明と共に、全56品目について承認書と製造実態に齟齬がないか調査を求める報告命令を出した。「エンセバック」の開発時点まで遡って調査を行うこと、違反を認識した後の対応を客観的証拠と共に時系列に沿って整理することなど、詳細な報告を求めている。化血研に弁明の機会を与え、2週間以内に業務改善命令を出す予定。
今回、再び化血研で不正が発覚したことについて、医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課の伊澤知法課長は、今回の問題が化血研からの報告ではなく、PMDAの精査で発覚したことを強調。「事前に厚労省に報告、相談もなく、少なくとも誠実な対応はしていない」と苦言を呈し、「今後も同じような対応が続けば製造販売業許可の取り消し処分になる可能性があることを十分に踏まえて対応してもらいたい」とクギを刺した。
ただ、「エンセバック」の最終出荷製品については、専門家の評価により品質に問題はなく、安全性が確認されたと判断し、出荷停止処分は行わないことにした。
■「負の遺産、全力で改善」‐化血研・木下理事
報告命令を受け、再び行政処分が下された化血研の木下統晴理事は記者団に、「今回の事態を反省している。負の遺産ではあるが、確実に改善していかなければならない。旧経営陣が退陣した後、負の遺産を一生懸命解消しているが、これまでの長い間の垢みたいなものが残っている。それを全力を挙げて改善していきたい」と強調。「患者のためのものづくりを全従業員が必死で頑張っている。従業員が動揺しないためにも、真剣に薬づくりに励むことに専念させていただきたい」と従業員をかばった。事業譲渡の進捗などについては「担当外」としてコメントを避けた。