■医師と協働、負担軽減に
病院内の医師と事前に協議して作成したプロトコルに基づき、院外の保険薬局からの疑義照会について、薬剤部が医師に代わって回答する運用が広がってきている。処方日数の変更や規格変更、成分名が同一の銘柄変更など概ね共通する疑義内容について、薬剤部が医師に代わって保険薬局に直接回答することで、医師の負担軽減や薬剤師業務の効率化につながったとの報告が増えてきた。一部の疑義照会項目の薬剤師による代行回答をめぐっては賛否あるものの、プロトコルに基づく運用は大学病院から地域の基幹病院まで確実に広がってきており、今後も医師の負担軽減、薬剤師の業務効率化に向けたPBPMの取り組みに弾みがつきそうだ。
東邦大学医療センター大森病院では、2010年から一包化の依頼について医師への疑義照会を不要としてきたが、昨年10月からは、成分名が同一の銘柄変更、貼付剤・軟膏の包装・規格変更など7項目の疑義照会に関して、薬剤師が代行回答する取り組みを開始している。
昨年10月から今年3月までの疑義照会5440件、16年度改定のあった4月の疑義照会1033件を対象に、薬剤師による代行回答の評価を行った結果、薬剤師が判断して代行回答した疑義は1221件(18.9%)と約2割だった。内訳を見ると、一包化の依頼が555件(45.5%)と半数近くを占め、次いで別規格製剤がある場合の調整規格の変更が226件(18.5%)となっている。
同院では、16年度改定の影響により、残薬確認に伴う疑義が増えていたが、患者の服薬アドヒアランスを医師が確認する必要性から、薬剤師の判断で代行回答を行っていない。ただ、医師の負担軽減のため、さらに対象項目の拡大を検討していく必要性があるとしている。
国立病院機構宇都宮病院でも、昨年3月から院外の保険薬局からの疑義照会について共通プロトコルを作成し、処方日数、規格変更、残薬、一包化、外用薬の混合など6項目は、薬剤師が代行回答する運用を開始している。今年1月から3月までに問い合わせのあった疑義照会307件のうち114件(37.1%)と約4割近くを薬剤部が回答しており、疑義内容の内訳は処方日数が最も多く、次いで残薬調整、規格変更だった。共通プロトコルを導入することで、医師への疑義照会件数は1カ月で約58件減少しており、医師の負担軽減と共に、薬剤師業務の効率化につながっている成果が見られている。
長野県立須坂病院では、今年6月から院内で承認されたプロトコルに基づき、院外の保険薬局から問い合わせのあった疑義照会のうち、一包化、粉砕などの典型的な項目については、薬剤師が代行回答する運用を開始。既に昨年12月から、保険薬局向けに患者の服薬状況などを薬剤科にFAXで情報提供するトレーシングレポートの活用を始めていたが、さらに一部の疑義照会項目について、保険薬局からの問い合わせを薬剤部で代行回答する取り組みを開始している。
これにより、疑義照会時間が有意に短縮される効果が見られており、今後は問い合わせの多い残薬調整における処方日数調整のプロトコル作成に取り組んでいく予定という。
総合相模更正病院は、昨年10月からプロトコルに基づき、院外薬局からの疑義照会について薬剤部で一部の項目を代行回答する運用を開始している。プロトコルの有効性を今年6月までに応需した保険薬局からの疑義照会によって検証した結果、今年6月までの疑義照会2427件のうち、薬剤部で代行回答したのは1370件と全体の56%に上っていた。
さらに、東京医科歯科大学医学部附属病院でも、院外の保険薬局からの疑義照会に対応するためのプロトコル作成を試みており、規格・剤形の変更、一包化、処方箋の期限延長などの内容は、保険薬局から問い合わせがあった場合、薬剤部で代行回答を可能と結論づけた。調査期間となった今年3月から5月までの3カ月間において、薬剤師の判断で回答した疑義照会の割合は45%となり、今後、同院では作成したプロトコル案の実施を薬剤部から提案する予定という。