敗血症患者の3割は致命的で有効な治療法なく
大阪大学は9月29日、敗血症により引き起こされる多臓器不全や血圧低下を増悪させるメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学疫学フロンティア研究センター免疫機能統御学の岸本忠三特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Proceedings of the National Academy of Science of the USA(PNAS)」オンライン版に掲載された。
画像はリリースより
敗血症は、細菌感染による細菌毒素によって体内の細胞から炎症を誘導する物質(サイトカイン)が大量に放出されることによる全身性の炎症反応。約3割の患者は致死的であり有効な治療法は存在していない。
Arid5a分子発現を抑制する分子の開発で治療法の確立につながる可能性も
研究グループはこれまでに転写因子と呼ばれるタンパク質の一種であるArid5aを発見しているが、このArid5aがγ-インターフェロンを産生するヘルパーTリンパ球(Th1)に必須の分子T-betをコードする遺伝子転写産物Tbx21mRNAに結合して、γ-インターフェロンの産生を亢進させ、敗血症ショックを増強することを新たに見出した。Arid5aがγ-インターフェロンのmRNAを安定化することで、γ-インターフェロンの産生が上昇し、ショック状態に陥る。一方で、Arid5aの遺伝子が働かないKOマウスでは、毒素投与後も炎症が抑制され生存していたとしている。
これらの結果から、Arid5a分子の発現を抑制する分子を開発すれば、敗血症ショックの治療につながることが期待されると、研究グループは述べている。
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