言葉で表現しにくい感覚特性を脳情報から直接取得
科学技術振興機構(JST)は9月29日、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の研究開発プログラムの一環として、生理学研究所、東海光学株式会社、株式会社ミユキ技研と共同で「視覚評価用脳波計システム」を設計開発したと発表した。同システムのプロトタイプの試作機を、10月4日から開催される「CEATEC JAPAN2016」の東海光学ブースにて展示する予定。
画像はリリースより
ある外部刺激に対する反応やどのような外部刺激を好ましく感じるかには個人差があり、精神疾患や発達障害では、感覚過敏や感覚鈍麻といった感覚異常を伴う場合があるといわれている。健常者でもさまざまな感覚特性を個性として持っており、例えば、聴覚に関する変化関連脳活動の振幅は、不安傾向という性格特性と相関することが示唆されている。こうした個人の感覚特性の情報は、視覚、聴覚、体性感覚などの感覚野から記録した脳活動から得ることができる。
研究グループでは、個人の感覚特性を脳活動から取得し、テイラーメイドで個人に合わせた製品を提供するニューロテイラーメイドの開発を進めており、まずは「視覚」と相性の良い「眼鏡」をモデルケースに研究開発を進めているという。
脳磁図研究をベースに、個人差と電極の装着誤差に対応
研究グループではまず、脳波計装置を設計するうえで、脳磁図(MEG)を用いて目的とする脳活動の信号源と電流方向を明確にし、頭の大きさ、脳溝の向き、装置の装着誤差といった脳活動の個人差に対応できるよう、適切な電極配置を決定するという方針で開発を行った。
「眼鏡」においては、「どの程度よく見えているか」を客観的に計測することが大切であるため、脳磁図を用いた視覚誘発脳磁界(VEFs)計測により、屈折誤差の負荷で活動が大きく変化する神経細胞群の位置と、その神経細胞群が大きく活動を変化させる刺激提示条件を検討した。その結果、屈折誤差の負荷で活動が大きく変化する神経細胞群が第一次視覚野にあること、その活動は視覚下視野への刺激画像提示により効率的に変化することを見出したという。
また、同じ脳活動であっても、信号源の位置や電流方向は被験者により異なるため、信号源の位置ずれ・電流方向の多様性に対応する、後頭5電極、前頭3電極の計8電極を設定、簡便に装着できるアンプ一体型のヘッドセット型脳波計を設計した。アンプは、既存の研究用脳波計をベースに、ヘッドセット形状に沿って内蔵できるよう新たに設計開発し、WiFi通信でのデータ通信にも対応したという。
この視覚評価用脳波計システムを用いることで、言葉で表現しにくかった情報を脳活動計測から客観的に取得できるうえ、簡便に装着できる装置であることから、子どもや発達障害などでの見え方の違いを客観的に評価する目的でも有用なデバイスになると期待されると、研究グループは述べている。
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・科学技術振興機構 共同発表