和歌山県立医科大の山本信之氏・横浜市立大の山中竹春氏が「LL7」の課題と期待を語る
ベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社は9月26日、都内でメディアセミナーを開催。和歌山県立医科大学 呼吸器内科・腫瘍内科 教授の山本信之氏と横浜市立大学 医学部 臨床統計学教室 教授の山中竹春氏が、先頃明らかになったEGFR変異陽性の進行性非小細胞肺がんに対する、チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のジオトリフ(一般名:アファチニブマレイン酸塩)とイレッサ(一般名:ゲフィチニブ)の効果を直接比較した無作為非盲検第2b相試験「LUX-Lung7(LL7)」の結果について解説した。
和歌山県立医科大学 呼吸器内科・腫瘍内科 教授
山本信之氏
山本氏は、ジオトリフがイレッサに比べて無増悪生存期間(PFS)、治療成功期間(TTF)を有意に改善したことを説明したうえで「両薬剤の有効性と、安全性のプロファイルが異なることがLL7から判明しており、一方の薬剤を他方の薬剤に単純に置き換えられるものではない」との見解を表明し、それぞれの薬剤が適した集団を今後詳細に検討していく必要性があることを強調した。
LL7はカナダや欧州、オーストラリア、アジア(日本は未参加)の13か国の64施設でステージIIIb/IVの未治療で進行・転移性のエクソン19欠失変異あるいはエクソン21のL858R点突然変異を有するEGFR変異陽性の非小細胞肺がん319例を登録。対象症例をジオトリフ群160例(1日40mg)とイレッサ群159例(1日250mg)の2群に無作為に割り付け、主要評価項目をPFS、全生存期間(OS)、TTFと定めて比較検討を行った。
この結果、PFS中央値、TTF中央値ともにハザード比0.73(95%信頼区間はPFSが0.57-0.95、TTFが0.58-0.92)であり、ともにイレッサ群に比べ、ジオトリフ群で有意に延長した(PFS:p=0.017、TTF:p=0.0073)。また、有害事象については発現頻度や副作用による投与中止は両群間で有意差はなく、患者のQOLを聴取したEQ-5D、EQ-VASも両群間で有意差はなかった。
有害事象とQOLの結果について山本氏は、比較的副作用が厳しいと言われるジオトリフ群では重度の副作用発現時には減量による対応が可能だったことが影響していると指摘。また、従来、エクソン19欠失変異を有する症例では、ジオトリフがより有効であると言われながら、LL7ではこの点でイレッサ群と有意差がなかったことについて「あくまでサブ解析の結果であり、エクソン19欠失変異の比較としては症例数も十分とは言えない」との見解を示し、LL7の結果のみでこの点を評価できないとの認識を表明した。
OSの結果次第で「臨床現場に一定のインパクト与える」
一方、統計学の立場からLL7について講演した山中氏は、「第3相試験よりもエビデンスレベルが劣る第2相試験だが、第3相試験結果が出る見込みがない中では、どのような条件ならば、リスク・ベネフィットの観点からこの結果を日々の治療選択に活用できるかを整理することが重要」との認識を強調。
これまでの結果に加えて、来月開催される欧州臨床腫瘍学会議(ESMO2016)で公表予定とされるOSで、ジオトリフがイレッサに比べて延長傾向が示されれば、「臨床現場には一定のインパクトを与えることになるだろう」との見通しを示した。