球麻痺症状が強い場合や気管切開の患者で息溜めが困難、MICを得られず
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)病院は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者を対象とした新たな呼吸理学療法として、LIC(Lung insufflation capacity)機能を有するLIC TRAINERの開発が終了し、9月16日より販売提供を開始した。
画像はリリースより
ALSに対する呼吸理学療法は、重要なリハビリテーションのひとつ。これまでは最大まで自力で吸ってからバッグバルブマスクなどを用いた最大強制吸気量(maximum insufflation capacity:MIC)で肺や胸郭を伸張したり、MICを得てから咳をしたりすることで咳嗽力を図る呼吸理学療法を行ってきていた。
しかし、のどの筋を使って息溜めができないとMICが十分に得られないという問題や、のどの筋を上手く使う感覚を得るまでに患者の努力を必要とすることも多く、容易ではなかった。さらに、球麻痺症状が強い場合や気管切開をしている患者では息溜めが困難なため、MICを得られないという問題があり、胸郭の柔軟性を維持することは困難であると同時に胸郭の柔軟性を評価することさえもできない問題があった。
1方向弁、安全弁、リーク弁で構成
そこでNCNPは、米国のBachらが報告した1方向弁を使用したLICに注目し、1方向弁を使用すると、喉の筋を意識して息溜めができなくても、また、気管切開をしていても、深吸気が得られることを確認。しかし、LICを得るための機器は国内外含めて販売されていなかったため、独自に試行錯誤した試作品を元に、カーターテクノロジーズ株式会社と共同開発を進めた。試作品を作るにあたって、「高い気密性」「一定圧で解放される安全弁」「患者側が意図的に操作できるリーク弁」の要素を取り入れることで、圧外傷の危険を減らし、かつ患者が主体的に呼吸理学療法に取り組めることを狙いとした。
LIC TRAINERを用いることで、ALSをはじめ、神経筋障害による拘束性換気障害を呈した患者に対して、深吸気を得るという大切な呼吸リハビリテーションを安全に、かつ患者さんの主体性をもって行えるようになった。加えて、のどの麻痺である球麻痺症状や気管切開により深吸気を得ることが難しかった患者でもLICトレーナーを用いれば簡単に行えるようになった。今までは深吸気が得られないため、本来は障害を受けない部位である肺や胸郭のストレッチが難しいため固くなりやすい患者でも、これからは可能になり、継続的に呼吸ケアが可能になると思われるとしている。
製造販売は、試作段階からNCNPと共同開発を行い、LIC TRAINER関連技術の共同出願を行っているカーターテクノロジーズが独占的に行う。販売価格は、27,000円(税抜き)の予定。
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・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース