6年制教育に関しては、卒業時までに学生が身につけておくべき必須の能力の到達目標を分かりやすく提示した「薬学教育モデル・コアカリキュラム」の改訂版が策定され、既に2015年度の入学生から適用されている。
また、教育内容の質保証に関しても、薬学教育評価機構による第三者評価が行われているが、4年制教育には、カリキュラムの成果を点検し、改善につなげる仕組みがないのが実情。
そこで、学術会議の薬学委員会薬学教育分科会が薬学会の教育委員会と連携し、4年制教育を念頭に置いた参照基準案の取りまとめを進めている。
基準案は、主に▽薬学の定義▽薬学固有の特性▽薬学(4年制)を学ぶ全ての学生が身につけることを目指すべき基本的な素養▽学修方法および学修成果の評価方法に関する基本的な考え方▽市民性の涵養をめぐる専門教育と教養教育の関わり――で構成。
学術会議分科会の奥直人委員長(静岡県立大学薬学部教授)は、4年制の学生が身につける基本的素養ではまず、基本事項(倫理、情報、語学、コミュニケーション、科学的探求心)についての知識を身につけた上で、中核専門科目(創薬基盤物理、創薬基盤化学、創薬基盤生物)を学び、創薬研究に必要な基礎知識を習得。その上で、より専門性を深めた応用専門科目(衛生、薬理・薬剤、医薬品・医療機器開発)で医薬品開発に関わる学問体系を学修すると説明した。
日本薬学会教育委員会の赤池昭紀委員長(名古屋大学大学院創薬科学研究科教授)は、基本事項の「倫理」において、身につけるべき基本的な能力として、正義性、社会性、誠実性に配慮することや、ヒトを対象とする研究や動物実験に関わる法・倫理規範の遵守などを示した。
学術会議連携会員の広田照幸氏(日本大学文理学部教育学科教授)は、参照基準について、「大学の教育改善を支援するためのツールであり、何かを判定するための評価基準ではない」としつつも、「各大学の自主性・自立性を尊重しつつ、大きな挑戦を求めるもの」と説明。その上で、「形だけの質保証ではなく、学生にとって意味のある実質的な質保証への活用をお願いしたい」と要請した。