これまでの精製法では純度や信頼性に懸念
大阪大学は9月23日、簡易かつ再現性の高いエクソソームの高純度精製法を開発することに成功したと発表した。この研究は、同大免疫学フロンティア研究センターの華山力成招へい教授(金沢大学医学系免疫学教授)、中井渉特任研究員、和光純薬工業株式会社らの研究グループによるもの。研究成果は、科学誌「Scientific Reports」オンライン版に同日付けで掲載されている。
画像はリリースより
エクソソームは、さまざまな細胞が放出する直径30~100nmの細胞外小胞で、分泌細胞と標的細胞の間で脂質やタンパク質、RNAなどを交換する新たな媒体として注目されている。近年、エクソソームの構成分子(特にタンパク質やRNA)が、がん細胞など病的細胞のバイオマーカーとして有用であることが報告され、疾患の早期診断や治療効果判定、予後予測などとの相関性に関する研究が活発化。エクソソームには分泌細胞由来のmRNAやnon-coding RNAが多く含まれ、微量なサンプルでもPCR法で増幅可能であることから、画期的なバイオマーカーとして、疾患との相関性と特異性についても広く研究されている。
しかし、エクソソームの精製法は超遠心法やPEG沈殿法などが主流で、不純物が多くバイオマーカーとしての信頼性が懸念されるうえ、超遠心法には多検体の解析が行えないなどの多くの問題があり、エクソソームを簡易に高純度で精製する技術の開発が期待されていた。
さまざまな疾患の早期診断や治療効果の判定への利用に期待
研究グループは、Tim4という膜タンパク質が標的細胞におけるエクソソームの特異的な受容体であることを発見。Tim4を発現した細胞は、Tim4の細胞外領域にあるIgVドメインを介して、エクソソーム膜表面のリン脂質ホスファチジルセリン(PS)とカルシウムイオン依存的に強く結合、エクソソームを細胞内へと取り込む。研究グループは、Tim4の細胞外領域と磁気ビーズとを結合させた「Tim4磁気ビーズ」を作製。キレート剤であるEDTAを含む溶出バッファーを用いて遊離させることで、高純度なエクソソームを効率よく精製することが可能だという。
実際にTim4磁気ビーズ法を用いて、ヒト白血病細胞から放出されたエクソソームを精製し、その純度を超遠心法やPEG沈殿法により精製したエクソソームと比較したところ、Tim4磁気ビーズ法は他の方法に比べ10~100倍以上に高純度なエクソソームを再現性よく回収できることが判明。これまで同定することができなかったエクソソーム上のタンパク質やRNAを数多く同定することが可能となり、Tim4磁気ビーズ法の有用性が示されたという。
今後、同技術によって精製されたエクソソームが、がんのみならず、免疫系や循環器系、脳神経系、内分泌系などさまざまな疾患におけるバイオマーカーの同定と解析に有用となりえると、研究グループは述べている。なお、同技術は和光純薬工業より「MagCapture(TM) Exosome Isolation Kit PS」として製品化され、国産試薬として販売が開始されている。
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