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脊髄損傷に対するヒトiPS細胞移植後の腫瘍化を予防する方法を開発-慶大

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2016年09月27日 PM01:00

移植前にNotchシグナルを阻害する薬剤で前処理し腫瘍化をブロック

慶應義塾大学は9月21日、ヒトiPS細胞から樹立した神経幹/前駆細胞をNotchシグナル阻害剤で前処理することで移植細胞の腫瘍化を予防し、安全に運動機能を回復・維持させることに成功したと発表した。この研究は、同大医学部生理学教室の岡野栄之教授と、同整形外科学教室の中村雅也教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Stem Cell Reports」オンライン版に9月22日付けで掲載されている。


画像はリリースより

これまで脊髄損傷を始めとした脳や脊髄の障害に対し神経幹/前駆細胞移植の有効性が報告されているが、その一方で移植した細胞の腫瘍化(腫瘍を形成する性質)をいかに防ぐかが最大の課題となっている。

研究グループでも、すでにヒトiPS細胞から樹立された神経幹/前駆細胞を、脊髄損傷を加えたモデル動物に移植することにより、良好な運動機能回復が得られることを報告していたが、あるiPS細胞株を用いた移植実験では移植後に腫瘍化を示し、一度回復した運動機能は再度低下を示していた。

hiPSC-NS/PCs移植の臨床応用を目指す上で大きな一歩に

今回、研究グループは、神経幹細胞において多分化能や自己複製能に深く関与しているNotchシグナルに注目し、このシグナルを阻害するGSIを用いて、iPS細胞由来神経幹/前駆細胞(Neural stem/progenitor cells derived from human induced pluripotent stem cells、)の性質の変化を評価。また、移植前にGSIで前処理を行ったhiPSC-NS/PCsを脊髄損傷モデル動物へ移植し、その有効性と安全性を検証した。

その結果、未分化・腫瘍様増殖性のある細胞の数が減少し、成熟ニューロンの数が増加。遺伝子発現解析においても、GSI投与群で未分化・増殖能に関連する遺伝子の発現が低下し、成熟ニューロンへの分化を示す遺伝子の発現が明らかに上昇した。また、腫瘍化を起こしやすいhiPSC-NS/PCsを用いた移植実験では、脊髄損傷後にGSI未処理のhiPSC-NS/PCsを移植したマウスと、前日にGSI前処理を行ったhiPSC-NS/PCsを移植したマウスで比較すると、移植後3か月の時点で、GSI前処理を行った群では移植細胞が過増殖することなく生着し、一度回復した運動機能はそのまま維持され、後肢で体重をしっかり支えての歩行が可能となっていたという。

幹細胞移植においてこれまで最重要課題であった腫瘍化の問題に対して、安全性および有効性が得られることを動物実験で示した今回の研究は、脊髄損傷患者へのhiPSC-NS/PCs移植の臨床応用を目指す上で非常に大きな一歩だと、研究グループは述べている。

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