17~19日に京都市で開かれた日本医療薬学会年会で取り組みを発表した。診療情報伝達シートは、[1]プロブレムリスト[2]各種検査値[3]直近のバイタル[4]直近の腎機能[5]直近の身長・体重[6]アレルギー情報[7]患者の氏名、生年月日、性別[8]備考欄――の各情報を1枚の用紙に印刷したもの。院外処方箋の附帯情報として発行している。
この中でも特に重要なのが病名などを羅列したプロブレムリスト。その患者はどんな疾患を抱えているのか、それぞれの疾患はいつ発生したのか、その後の治療経過はどうなのかを医師の視点から簡潔に記載したもので、患者情報の核になる存在だ。
渡邉氏は週に約3日、聖路加メディローカスで診察し、自らが診察したほぼ全ての患者を対象に診療情報伝達シートを発行している。その患者数は月間約300人。現在は、電子カルテから手作業で必要な情報を転記して作成しているため渡邉氏1人の取り組みにとどまるが、18年1月のシステム更新を機に転記が自動化される仕組みを導入したい考えだ。
プロブレムリストの提供について薬局薬剤師にアンケートを実施すると「役立つ」「直感的で素早く要点を把握できて便利」などと評価する声が多かった。渡邉氏自身も、薬局薬剤師からの疑義照会に「提供した情報が反映されていると実感することがある」と語る。
現在、院外処方箋に情報を添付する取り組みが各地で行われているが、その多くは病院薬剤部主導で、提供する情報も検査値にとどまっているのが現状。医師が薬局に向けて能動的に情報を提供するのは希有な事例だ。
渡邉氏は、院外処方箋に病名などを記載する欄を設けた京都大学病院の取り組みに触発され、今回の情報共有の試行に踏み切ったという。
情報通信技術(ICT)を活用し、病院の電子カルテ情報を診療所や薬局間で共有する地域が増えつつあるが、利用する側は膨大な情報の中から必要な情報を探し出す作業を強いられる。「いかに必要簡潔にサマライズして情報を渡せるかが重要になる」と渡邉氏は話した。
電子カルテのプロブレムリストを診療情報伝達シートに自動的に転記する仕組みはどこでも安価に構築でき、特別なネットワークを組まなくても幅広く活用できる利点がある。一方、医師は自分の専門分野だけのプロブレムしか記載しない場合もあるため、網羅的なプロブレムを記載してもらうよう「医師の教育を進める必要がある」と渡邉氏は課題を語った。