難治性のアレルギー疾患発症の鍵となるタンパク質を発見
千葉大学は9月12日、喘息や好酸球性副鼻腔炎などの難治性のアレルギー疾患発症の鍵となるタンパク質を発見し、発症のメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院・中山俊憲教授の研究グループによるもの。研究成果は、9月16日発行の米学術誌「Science Immunology」オンライン版に掲載された。
画像はリリースより
アレルギー疾患等は、CD69分子を発現した病原性免疫細胞が血管から外に出て、肺などの炎症組織に到達することで発症するといわれている。同研究では、この免疫細胞が血管から外に出るのを手伝うタンパク質の存在を発見。このタンパク質はCD69分子のリガンド分子で「Myosin light chain 9/12 (Myl9/12)」 と呼ばれている。
研究グループによると、Myl9/12分子は、炎症に伴って血小板から放出され、血管の内側に付着して「ネット様構造(Myl9 nets)」を構築。病原性免疫細胞が血管から外に出る際に、Myl9 netsが“プラットフォーム”として働いていると考えられることがわかった。研究では、これを「CD69- Myl9システム」と命名。最近、日本でも増加している難治性炎症疾患の好酸球性副鼻腔炎患者の解析で、ポリープ中にMyl9 netsが多く確認され、CD69-Myl9システムが慢性炎症疾患の慢性化や難治性の根本要因になっている可能性も示唆されたとしている。
新規治療法の実用化に向けた開発を進行中
同研究では、CD69とMyl9/12分子の相互作用を阻害する抗体を作成。この抗体を喘息マウスに投与したところ、喘息が全く起こらなかったことから、これらの抗体は、ヒトでの難治性呼吸器疾患の画期的治療薬となる可能性がある。
企業との共同開発研究により、ヒトへの投与が可能なヒト型抗体がすでに作成されており、実用化に向けた開発が進行中。喘息などの難治性呼吸器疾患に苦しむ患者にとって効果的な治療法となることが期待される。今回の研究の成果を速やかに患者へ届けるためにさらなる研究を進めていくと、研究グループは述べている。
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